
パンフレットを発刊
米の検査規格の見直しを求める会はこのほど、カメムシ斑点米とネオニコチノイド系農薬に焦点を当てたパンフレット『知っていますか? 斑点米と農薬とミツバチ大量死』を発刊した。未熟な米をカメムシが吸ったあとが黒く残り、等級落ちの原因となる斑点米(着色粒)となることから、カメムシ防除のためとして、農水省は農薬の使用を推奨している。農水省はまた、水田で使用されるネオニコチノイド系農薬がミツバチの大量死の原因であることも認めている。世界的にはネオニコ系農薬に対する規制が強化されている中で、緩和に動く日本の農薬行政の背景にある斑点米と農薬の関係を分かりやすく解説している。同会は2007年より、米の検査規格から着色粒規格の削除を求めている。
日本の田んぼで一番使われている殺虫剤がカメムシ防除用であり、ネオニコ系農薬が多く使われている。斑点米カメムシ類が、植物防疫法の指定有害動植物に指定されたのが2000年。この指定以降、ネオニコ系農薬の出荷量は急増する。2000年に約200トンであったものが、2008年には約2倍の400トン以上にまで達している(アクト・ビヨンド・トラストまとめ)。パンフでは、実際のカメムシ被害の田んぼ(面積)の3倍の田んぼで斑点米カメムシ防除のために農薬が散布されていることを指摘している。
この農薬の大量使用の背景には、農産物検査法による米の検査規格に決められた着色粒規格がある。この規格では、1000粒に1粒(0.1%)までは1等米、3粒まで(0.3%)なら2等米、7粒まで(0.7%)なら3等米と厳しい。等級の違いによる価格差は、1等と2等で600円から1,000円(60キロあたり)あり、農家は2等米にならないように、予防的に農薬を散布しているのが実情だという。
厳しい着色粒規格を国内農家に求める一方で、輸入米には1%とゆるい規格が設定されている。ミニマムアクセス米により、年間10万トンの主食用の米が輸入され、TPP交渉では対米枠が20万トンとも報じられている。今後さらに、主食用の米の輸入増大が予想されるにもかかわらず「外国には外国の基準がある」として、この不合理な“内外規格差”を維持しようとしている。輸入米が1%で運用できるのであれば、当然、国内産米に同じ基準が適用されるのが筋だろう。
同会などはかねてより、2000年の指定有害動植物に指定した根拠を示すように求めてきたが、農水省は「資料がない」として、その根拠となる文書や資料を示すことができていない。ネオニコ系農薬の使用料増大の原因である、この指定そのものに疑義があるといえる。
同会では、こうしたネオニコ系農薬の散布が、カメムシばかりか田んぼの生態系を壊し、ミツバチの大量死の原因にもなっていると指摘している。生態系が保たれている有機の田んぼでは、カメムシが大量発生することはない。
一方、斑点米は色彩選別機を使うことで自動的に除去できる。農協のライスセンターや流通業者が使用して、安い2等米を1等米として流通させることが可能となっている。消費者が手にする米には、1等米とも2等米とも、そうした等級表示はないからだ。浸透移行性で分解されにくいネオニコ系農薬は、米の内部に浸透し、研いでも落ちることはない。一方で農水省は、消費者がきれいな米を望んでいるからだとして、着色粒規格を見直そうとはしていない。
同会のパンフレットは、こうした斑点米とネオニコ系農薬の関係を広く知ってほしいと刊行された。「できるだけ多くの人に読んでもらいたい。友人、知人に勧めてください。そして、農水省へ意見を届けてください」としている。
このパンフレットは1部100円(送料別)と手ごろ。反農薬東京グループと食政策センター・ビジョン21で取り扱っている。
頒価:100円(送料別)
発行:米の検査規格の見直しを求める会
文・構成:辻万千子・安田節子
イラスト:小澤明子
編 集:山田美智子
- 斑点米って知ってる?
- どうして斑点米がいけないの?
- カメムシは周辺の雑草から水田へ
- カメムシと農薬
- 農薬散布の仕組み
- 死ぬのはミツバチばかりじゃない
- ネオニコチノイド系農薬とは
- 見栄えが第一だから
- 色彩選別機ではじく斑点米
- 消費者は農薬散布を望まない
●パンフレット問い合わせ・申込先
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