日消連は「隠ぺい」と指摘
北海道立総合研究機構(道総研)は8月14日、日本消費者連盟(日消連)などに対して、個人情報保護を理由とする回答拒否が誤りであったが、それでも公開できないとするニ度目の回答を行った。この問題は、「北海道農業者の会」が遺伝子組み換え作物の試験栽培を道総研に要望したと報じられたことを巡って、日本消費者連盟(日消連)と遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン(キャンペーン)は情報の公開と道総研の対応を明らかにするように求め、それを道総研が拒否。日消連とキャンペーンは7月、公開するように再要請を行っていた。
道総研は8月14日付けの回答書で、「北海道農業者の会」による要望書の公開を、個人情報保護条例に基づいて拒否したことについて誤りを認め、「再要請という貴連名(ママ)のお手を煩わすことになりましたこと、心よりお詫び申し上げます」と謝罪した。しかし、本来の情報公開については、北海道情報公開条例の手続きを踏んで公開か非開示の判断を行うので、公開申請をするようにと、またまた「お手を煩わす」内容の回答であった。
この木で鼻を括るような道総研の回答に日消連とキャンペーンは8月25日、再度抗議するとともに、速やかに情報を公開するように求める「抗議と再々要請」を送った。この中で日消連などは、道総研は遺伝子組み換えに関する情報を隠ぺいしようとしているとしか考えられない、と指摘した。
「北海道農業者の会」から要望があったことすら認めようとしない道総研の対応は、首を傾げざるを得ない。北海道が自ら行った道民意識調査では、北海道民の8割が遺伝子組み換え作物栽培を懸念している中、そうした道民の声に謙虚に耳を傾けるのであれば、「要望を受け取ったが、試験栽培は行わない」と一言明言すればよいだけである。明言できない裏には何があるのか、と思わざるを得ない。
一連の道総研の不誠実な対応に垣間見えるのは、日消連が指摘している「隠ぺい」の姿勢である。取って付けたような「お手を煩わす」回答に終始すれば、痛くもない腹を探られるだけである。道総研自らが、遺伝子組み換え作物の試験栽培をやりたくてしようがない、とすら思えてくる。
道総研は、情報公開請求すれば公開か非開示の判断を行うとしているが、これまでの対応をみると、非開示か開示であっても全面黒塗りも予想される。
日消連とキャンペーンが求めた「再々要請」の回答期限は9月3日。道総研の回答が注目される。
【「北海道農業者の会」の要請とその後の経過】- 4月22日
国際アグリバイオ事業団(ISAAA)が、「北海道農業者の会」が遺伝子組み換え作物の試験栽培を求める要望書を、道総研に提出したと報じた。 - 5月30日
日消連とキャンペーンは、道総研に対して情報公開と道総研の対応方針を明らかにするよう求める3項目の公開質問状を送付。公開質問状には農民団体、生協、市民団体、NGOなど58団体が賛同。 - 6月12日
道総研は、日消連とキャンペーンに対して、北海道個人情報保護条例に規定する個人情報であり、公開できないと回答。 - 7月16日
日消連とキャンペーンは、道総研に対して、条例解釈の誤りを指摘し、要望書の公開を求め再要請。 - 8月14日
道総研は、条例解釈の誤りを認め謝罪するも、あくまでも公開を拒否し、北海場情報公開条例に基づく申請を行うようにと回答。 - 8月25日
日消連とキャンペーンは、抗議と公開を求める再々要請を、道総研に送付。
◆抗議と再要請(8月25日)
2015日消連第10号
2015年8月25日
理事長 丹保憲仁様
共同代表 大野和興
共同代表 田坂興亜
2015年5月29日付申入れおよび公開質問状への回答に対する抗議と再々要請
貴研究機構よりの8月14日付け文書(道総研第758号)を受け取りました。
北海道個人情報保護条例を理由に、遺伝子組み換え関連情報の公開を拒否された件につきまして、当方より、そうした対応は道条例の根拠法の趣旨に照らしても、条例法文上の解釈からみても間違いであることを指摘、当該情報に対する私どもの要求に速やかに対応されるよう再度文書(日本消費者連盟発7号)を7月30日付けでお送りした経過があります。
貴研究機構より届きました文書758号は、当方の指摘を全面的にお認めになり、「基本的な条例の解釈を誤っていた」と述べられています。その上で続いて、「再要請という貴連名(ママ)のお手を煩わすことになりましたこと、心よりお詫びいたします」とも述べられています。
当連盟が貴機構に要請した事項に関し、貴機構が拒否されたのは間違いであったことをお認めになったことは、以上の記述から明らかであります。ここから導き出せる唯一の結論は、当連盟の要請に従い、当該情報速やかに明らかにすることであります。ところが貴機構8月14日付け文書(道総研第758号)は、そのことが知りたければ改めて北海道情報公開条例に基づき開示請求せよと当連盟に要求しております。その上で「開示又は非開示を(機構が)判断する」とも述べておられます。
いったいなぜ、こういった二重三重の手間を非営利の市民団体に押しつけられるのか。理解不可能で困惑しております。食の安全と農業の発展を願い、遺伝子組み換え作物・食品に関する情報を知りたいと願っている市民に過重な手間と負担を押し付け、遺伝子組み換えに関連する情報を隠ぺいしたいという意図を貴機構はお持ちになっているとしか考えられません。
改めて、「北海道農業者の会」が2015年4月7日付で貴機構に出した要望書の公開を求めます。回答は2015年9月3日までに日本消費者連盟宛てにお願いいたします。
以上
共同代表 安達由起 様
共同代表 大野和興 様
共同代表 田坂興亜 様
遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン
代表 天笠啓祐 様
「2015年5月29日付申入れおよび公開質問状への回答に対する抗議と再要請」について(回答)
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
平成27年5月29日付け2015日消連第2号でご質問のありましたこのことについて、弊機構に対する道民や企業等の研究ニーズに関する情報は、北海道個人情報保護条例(平成6年北海道条例第2号)第2条第1号に定める個人情報であり、個人情報については、同条例第8条第1項により「当該実施機関以外のものへ提供してはならない」と規定されていることから、要望があったかどうかを含め当該情報を開示することはできませんので、ご了承ください。
平素は格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。平成27年7月30日付けで再要請のありましたこのことについて、平成27年6月12日付け道総研第413号で弊機構から回答申し上げました回答書では、「弊機構に対する道民や企業等の研究ニーズに関する情報は、北海道個人情報保護条例に定める個人情報であり」と回答いたしましたが、改めて条例の解釈を確認したところ、同条例の対象はあくまでも個人からの研究ニーズに限られるものでした。基本的な条例の解釈を誤っていたものであり、再要請という貴連名のお手を煩わすことになりましたこと、心よりお詫び申し上げます。
改めて今回の要請についての対応を検討させていただいた結果、企業等からの研究ニーズに関する情報については、北海道情報公開条例(平成10年北海道条例第28号)第2条の公文書に当たることから、同条例第13条による開示請求をいただいた上で、開示文は非開示の判断をさせていただきます。
ご検討の程、よろしくお願いいたします。
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