9回目を迎える今年の国際有機農業映画祭は「農をつなぐ」をテーマに、12月20日(日)に開催される。今回の上映は6作品。そのうち3作品は日本初公開作品。また、昨年他界された小泉修吉監督の『農薬禍』が追悼上映される。
・国際有機農業映画祭2015
・チラシ
今回の上映作品では、3本が初公開。『種をつぐ人びと』(原題“Open Sesame”)は、モンサントに象徴される遺伝子組み換え(GM)種子と種子産業の寡占化の進行に対抗する人びとの姿を描いている。在来種の保存と継承を進める人びと。種子主権は自分たちにあると訴える有機種子農家。クラウドファンディングで資金を集め、有機種子の供給に立ち上がった若者。GM種子の試験圃場が集中し、大量に散布される農薬汚染に反対するハワイの人びと。タネを自分たちの手に取り戻そうとする人たちを追っている。
『偽善の米』は、商業栽培が目前とされる遺伝子組み換えの米・ゴールデンライスに反対するフィリピンの人びとの声を集めた作品。ビタミンA欠乏症の予防を表看板にして、ゲイツ財団などが多額の資金を投入し、国際稲研究所(IRRI)で開発が進められてきたゴールデンライスが、その後ろに控えたいろいろなGM作物の商業栽培への突破口としての位置にあると喝破する。このようなGM米を食べなくても、緑黄色野菜を食べることで解決できる。GMゴールデンライスの建前が偽善にすぎないことが浮かび上がってくる。
『都市を耕す ―エディブル・シティー』(原題“Edible City”)は、米国カリフォルニアで展開される、遊休地を畑にしようとする運動を描いた作品。単に畑にして野菜つくりを楽しもうというのではなく、ジャンクな食事をとらざるを得ない都市における食糧供給問題との連携や、99%運動との関連、学校での食育の展開など具体的な実践を描いている。
『農薬禍』は、1960年代の農薬散布で健康を蝕まれていた農家の状況を追った作品。昨年なくなられた小泉修吉監督を追悼しての上映。
『草とり草紙』は、息子が売り渡した成田空港二期工区内の自宅に一人で住む86歳のばあちゃんの一人語り。「あんまりいいと思って暮らしてなかったなぁ」と言いながら「今、一番いいよ。一生で今一番」と語る。戦前、戦後を、国策に翻弄されながらも、たくましく生き抜いてきた一人の農民の生き様が浮かび上がる。1985年の作品。
『アラヤシキの住人たち』は、信州・小谷村の山奥にある、大きな屋根のアラヤシキ(新屋敷)で繰り広げられる、共働学舎の人びとのゆったりとした物語。
農ってなんだか平和っぽい、平和ってなんだか農っぽい。
ばあちゃん や じいちぁん、
そのまた先の ばあちゃん や じいちぁん、
そのまた先の ばあちゃん や じいちぁん が
受け継ぎ、伝えてくれた営みを、
今の世に、次の世に、
そのまた次の世に、たすき のように渡したい。
2015年の国際有機農業映画祭、そんな思いを込めました。
国際有機農業映画祭
共同代表 大野和興
1号館〔B1〕1002シアター教室
【西武池袋線】「江古田駅」より徒歩7分
【西武池袋線】「桜台駅」より徒歩8分
【都営大江戸線】「新江古田駅」より徒歩9分
【東京メトロ副都心線】「新桜台駅」より徒歩7分
【東京メトロ有楽町線】「新桜台駅」より徒歩7分
25歳以下:前売 500円・当日 1,000円
※25歳以下の方は、当日、証明書提示のこと
この遺伝子組み換えゴールデンライスは、文字通り黄金色の米となる。この米を食べれば、失明に至るビタミンA欠乏症が予防できるとの触れ込みで、フィリピンに本部を置く国際イネ研究所(IRRI)が中心となって、ゲイツ財団などの資金で開発が進められてきた。
GMゴールデンライスの商業栽培には、遺伝子汚染を心配する有機農民はもとより、保育関係者、宗教者、シェフなどが懸念を明らかにする。元国際稲研究所の研究者ですら、緑黄色野菜を食べることで解決する問題であり、貧しい人びとはこの米も買わねばならないとして商業栽培に反対する。
国会議員は、病気の予防を表看板としたGMゴールデンライスの商業栽培を突破口に、遺伝子組み換え作物を大々的に栽培しようとするものだ、とこの動きを喝破する。GMゴールデンライスの金色は、希望の金色ではなく偽善のメッキにすぎない。
「カン、カン、カン」板木が鳴る。この音で一日が回る。季節も巡る。田植えをして稲刈りをして……、ヤギが子を孕む。雪が降りはじめれば、百葉箱がかさ上げされる。そういえば、住人の出産や結婚式もあった。
長い人では35年も暮らしている一方、風に寄せられては散っていく人たち。ふらりと戻ってきた人がいる。受け入れるか否か話し合いは続く。「いいじゃない、仕事助かるし」の一言がみんなを救う。一瞬、時間を止めることの出来る人さえいる。信州小谷村の片隅、大きな屋根のアラヤシキ(新屋敷)、共働学舎と呼ばれる空間に住む人びとの物語がはじまる。
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