米国マクドナルドは9月9日、米国とカナダの約1万6千店で使用する卵を、今度10年間で、完全に平飼いの卵に移行すると発表した。消費者の好みの変化と動物福祉の観点からの決定としている。日本での展開はなさそうだ。
マクドナルドは米国で年間20億個の卵を使用使用し、そのうち1300万個が平飼いの卵だとしている。同社は、2011年より平飼い卵の一部導入を始めているとしている。
リリースでは、マクドナルドに平飼い卵を供給しているHerbruck農場を紹介している。この農場の「平飼い」は大規模で、ケージがないというだけで密度は高く、屋外飼育の平飼いのイメージとは大きく異なっている。Herbruck農場はまた、多くの家族経営の農場から飼料(有機、慣行)を購入し、小規模の有機の卵生産農場と組んでいるとしている。
ニューヨークタイムズによれば、米国では年間約436億個の卵が生産され、マクドナルドだけで約4%を使用していることになる。また、平飼い卵は10%〜40%の価格アップと見積もられているが、マクドナルドのリリースは、価格については言及していない。
こうした平飼い卵への移行は、動物福祉の観点から、米国の動物愛護団体がマクドナルドなどに要請していたという。今回のマクドナルドに限らず、米国ではバーガーキング、ユニリーバ、ゼネラル・ミルズなども平飼い卵へ移行しているという。
米国マクドナルドは今年3月、2017年までに使用するチキンの全量を抗生物質不使用のものへの切り替えと、今年後半から遺伝子組み換えの牛成長ホルモンrBST(ポジラック)を使用しない牛の牛乳に切り替えることも発表している。
米国の食品業界は、NON−GMOや有機農産物、抗生物質フリーなどの使用、あるいは人工着色料などの化学合成添加物の排除など、消費者の要求に合わせた方向に進みつつあるようにもみえる。その一方で、大手食品業界が遺伝子組換え表示の阻止に動くなど、一見ちぐはぐな対応を続けている。
日本の消費者の「圧力」が弱いのか、こうした米国食品業界の動きは、必ずしも日本のマクドナルドなどには無縁のものであるのは残念。
・McDonald, 2015-9-9・NYT, 2015-9-9
・Grist, 2015-9-9
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