EU議会本会議は4月13日、6月に切れるグリホサートの再認可に関し、現在より厳しい使用条件をつけ、15年ではなく7年間の再認可とすべきだとする決議を議決した。賛成は374、反対225、棄権102。欧州議会環境委員会は3月、再認可反対を賛成多数で議決していたが、条件付きとはいえ、本会議で覆された形となった。
決議は法的拘束力を持たないが、グリホサートの使用継続が農民にとって必要であるとする欧州議会内中道右派グループが主導。グリホサートの使用条件として、職業的な使用に限定し、公共の公園や遊び場、庭園、IPM(総合的病害虫管理)、収穫後の使用を認めないという条件を付けた。EUにおけるグリホサートの認可は6月までとなっている。
欧州議会内会派の欧州左翼連合(GNU/NGL)は、この決議は欧州市民の健康に対するギャンブルであり、モンサントなどの多国籍企業が勝利し、ヨーロッパの市民の健康が敗北した、とする声明を出した。
ロイターによれば、EU委員会はグリホサートの再認可に関し、5月18日からの農薬委員会での投票を予定しているという。また、3月に予定されていた投票は、再認可が否決される状況にあったともしている。この時点では、イタリア、フランス、オランダ、スウェーデンが再認可反対を明らかにしていたという。
グリホサートの再認可に関し、英国とドイツは賛成の立場を明らかにしているとしている。一方、再認可に反対の立場のフランスは、規制官庁のフランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)がこの8日、一部のグリホサート製剤の禁止方針を決定したと報じられている。
・欧州議会, 2016-4-13 ・欧州議会, 2016-3-22 ・GUN/NGL(欧州左翼連合), 2016-4-13 ・Greens-EFA, 2016-4-13(欧州緑グループ・欧州自由連盟) ・Reuters, 2016-4-13 ・Reuters, 2016-4-8
● 広がるグリホサート汚染 尿やビールからも検出
欧州では、グリホサートの環境汚染が明らかになってきている。ドイツでは、ビールの代表的な14銘柄すべてからグリホサートが、最大約0.03ppm検出されている。昨年には、英国で市販されているパンから、2013年には欧州全域のヒトの尿からも検出されている。
グリホサートの広範囲の汚染が明らかになり、「おそらく発がん性がある」とする国際がん研究機関(IARC)による検討結果などから、欧州の3分の2がグリホサートの使用に反対しているという。グリホサートの再認可には140万人以上の反対署名が集まっていた。
・GMO Evidence, 2013-6-13● 限定的な再認可か
グリホサートの再認可の見通しについての確定的な報道はまだない。議会決議も拘束力がないが、登録期間を短縮し規制を強化しての再認可が落としどころになるかもしれない。
英国紙ガーディアンは4月22日、欧州委員会筋の情報として、通常の15年ではなく10年の限定的な再認可と報じた。さらに欧州化学機関(ECHA)の検討結果で、グリホサートの有害性が確認された場合には認可を取消す見込みだとしている。
・Guardian, 20116-4-22【関連記事】
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