
フランスはグリホサートの再認可に反対の姿勢を明らかにしているが、食品環境労働衛生安全庁(ANSES)は4月8日、モンサントのラウンドアップを含む、一部のグリホサート製剤を禁止する方針を決定したとロイターが報じた。
ロイターによれば、食品環境労働衛生安全庁は、欧州安全機関(EFSA)よる「発がん性がない」とするグリホサート単体での評価と比べ、「おそらく発がん性がある」と評価した国際がん研究機関(IARC)の添加物を含むリスク評価を重視し、単体より危険との判断があった模様。
世界保健機構(WHO)の国際がん研究機関(IARC)は昨年3月、モンサントの除草剤ラウンドアップの主成分であるグリホサート製剤について、公表されている研究論文をも分析し、「おそらく発がん性がある」物質であると発表した。これに対して欧州安全機関(EFSA)は昨年11月、非公表のデータも含めた分析結果により、グリホサート単体では「発がん性はない」とする見解を明らかにしていた。
フランスのグリホサート製剤の禁止は、健康影響の大きいtallowamineを含むものだけで、対象製剤の市場からの回収の最終決定には数週間かかるとしている。
日本の厚労省や食品安全委員会などを含む各国の規制当局は、非公表のメーカーデータを元にして農薬単体で評価している。このやり方には多くの批判があり、欧州議会の一部からは全データ公開の要求が出され、PAN UKなどの訴訟も起きている。
ロイターによれば、このフランスの決定に対してモンサントは「影響を受ける」とし、欧州での反グリホサートの動きを「政治的」と非難した、としている。
・Reuters, 2016-4-8 ・EFSA, 2015-11-12EU委員会は5月、6月で切れるグリホサートの認可を、31年までさらに15年延長するか否かの投票を行う予定。すでにフランス、イタリア、オランダ、スウェーデンなどが再認可に反対の意向を示しているという。この時期のフランスの決定は、こうした再認可のせめぎ合いに一石を投じるもので、再認可承認を強く意識したもののように見える。
・Reuters, 2016-4-8
● モンサントの農薬部門3割減収
「終わりの始まり」か
モンサントは4月6日、第2四半期の決算を公表。売上げは前年同期比約13%(約7億ドル)減。遺伝子組み換えトウモロコシ種子もダイズ種子も売上減。農薬部門は約30%の大幅減となったとしている。
・Monsanto, 2016-4-6
【関連記事】
- 東アジアは農薬のホットスポット 日本はトップ5
- イタリアのパスタメーカー グリホサート懸念からカナダ産小麦の輸入を削減
- 欧州市民団体 EU禁止農薬の輸出禁止と使用した食品の輸入禁止を求める
- 農薬再評価 ネオニコとグリホサートなど優先14品目を告示
- グリホサート系国内出荷量 2019年度は前年比5%減
- 厚労省 GM添加物2品目を承認 18品目が手続き中
- 富山県産大豆から残留グリホサート 日消連などは散布中止要請の公開質問状
- 欧州委員会 2030年までの生物多様性・農業戦略を策定 有機農業を25%に
- ラウンドアップ損賠訴訟 原告は4万3千人に急増
- 「安全」とされるフルピラジフロンもミツバチに有害