英国の国民投票後、離脱派の「約束」が反故にされるケースが明らかになり、再投票を求める署名が300万人以上に達したという。英国の農民への補助金も反故にされた一つだと、英国紙のガーディアンが報じている。英国は、年30億ポンドをEUから農業補助金として受け取っていたが、代わりの財源は不明だという。EU離脱が決まってから、反故となる約束が次々と明らかになる英国の状況は、離脱派の「詐欺」といっても過言ではない。
英国農家の収入は平均2万ポンド以上あったが、その55%はEUからの補助金だという。離脱派の農業大臣は国民投票に先立ち、離脱したとしてもEUの補助金相当の予算を確保しているとしていたが、確保できるか分からないという。英国農民は「未知の海」に率いられたとコメントする識者もいる。
EU加盟国の中でも英国の食糧自給率は低く、約60%に留まっている。EU離脱でポンド安となり食料価格が上がるだろう、という懸念がもう出ている。
・Gaurdian, 201-6-6-26● 離脱後、ネオニコ規制は緩和の可能性
農業担当大臣は離脱派で、投票前に、EU離脱後の環境政策は「より柔軟にアプローチ」と明言しているという。この発言を受けて、離脱後に英国のネオニコ規制が緩和されるの可能性が大きい、と大地の友などが警告している。EUでは2013年12月、ミツバチなどへの影響懸念からネオニコ系3農薬(イミダクロプリド、チアメトキサム、クロチアニジン)の一時的な使用が禁止されている。しかし、英国は15年、一部のナタネ栽培に限定してチアメトキサムとクロチアニジンの使用を許可している。離脱後は「柔軟」な対応がなされそうだと懸念されている。
英国では、GMアマナズナとGMジャガイモの試験栽培が行われているだけだが、「柔軟」な対応はGM作物栽培にも及ぶ可能性もありそうだ。
・Guardian, 2016-6-15● 英国の環境政策は「予防原則」を捨てるのか
英国の有機農業団体であるソイル協会は投票翌日の6月24日、離脱派が勝ったことに失望したとする声明を発表した。その中でソイル協会は、EUの環境政策が予防原則に基づいて行われてきたことを指摘した。そのことで英国の環境改善が進んできたとして、離脱後の環境政策転換への懸念をにじませている。
・Soil Association, 2016-6-24【関連記事】
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