

米国農務省動植物検疫局(APHIS)は8月5日、ワシントン州の小麦を検査した結果、未承認の遺伝子組み換え小麦は見つからなかったと発表した。APHISは7月29日、ワシントン州の農場で、モンサントの未承認の除草剤ラウンドアップ耐性遺伝子組み換え小麦MON71700の自生が確認されたと発表していた。
この自生の確認を受けて、韓国は輸入手続きを一時的に停止し、流通在庫を検査していた。ロイターによれば、韓国食品医薬品安全処は8月5日、8月1日に試験用サンプルを受け取り検査したが、ワシントン州から輸入された小麦と小麦粉から問題の未承認遺伝子組み換え小麦は見つからなかったと語ったという。
・APHIS, 2016-8-5 ・Reuters, 2016-8-5日本の農水省、厚労省からは、この遺伝子組み換え小麦の検査と結果に関する発表はない。農水省は、農水省のサイトに「2016年(平成28年)7月に米国で発見された、我が国で未承認の遺伝子組換え小麦について」と題した8月1日作成の文書を掲載。そこでは、問題の遺伝子組み換え小麦発見の経緯と日本政府の対応を述べている。また、今回の自生確認により停止している買付と売渡の対象となるウェスタン・ホワイトの輸入量は、輸入全体の約14%、年間約68万トンで、約2か月の備蓄があり問題は起きないとしている。
・農水省, 2016-8米国の検査結果を受けて農水省は、買付と売渡の一時停止を早い時期に解除しそうだ。しかし、10年以上前に「厳重な管理」のもと廃棄したはずの試験栽培品種が、突然、浮上してくるということは、管理の杜撰さを示しているといえる。
今回のMON71700の自生確認発表の直前に韓国では、輸入の飼料用小麦から、モンサントの未承認除草剤耐性遺伝子組み換え小麦MON71800が見つかっている。この遺伝子組み換え小麦は、2013年に米国オレゴン州で自生が確認され、日本や韓国、台湾などが一時的に輸入停止の措置を取り、大きな問題となった。この品種の自生は、最終的には原因不明で片づけられた。そのMON71800が再び現れたことは、試験栽培品種が「漏出」し、広範に自生している可能性がないわけではないことを示していると言えるだろう。今後、同じような未承認品種による汚染が浮上して来ないとは断言できない。
【関連記事】- 東アジアは農薬のホットスポット 日本はトップ5
- イタリアのパスタメーカー グリホサート懸念からカナダ産小麦の輸入を削減
- 欧州市民団体 EU禁止農薬の輸出禁止と使用した食品の輸入禁止を求める
- 農薬再評価 ネオニコとグリホサートなど優先14品目を告示
- グリホサート系国内出荷量 2019年度は前年比5%減
- 厚労省 GM添加物2品目を承認 18品目が手続き中
- 富山県産大豆から残留グリホサート 日消連などは散布中止要請の公開質問状
- 欧州委員会 2030年までの生物多様性・農業戦略を策定 有機農業を25%に
- ラウンドアップ損賠訴訟 原告は4万3千人に急増
- 「安全」とされるフルピラジフロンもミツバチに有害