
毎年のようにジャガイモのソラニン中毒が報じられている。その多くが学校の菜園で栽培されたジャガイモを食べてのことという印象がある。今年7月21日、静岡県藤枝市の小学校では、理科の授業で育てたジャガイモをゆでて試食したところ、児童15人が不調を訴え、うち9人が医療機関を受診したことで明らかになった。
ジャガイモのソラニン類(ソラニン、チャコニン)による中毒は侮れない。過去には、子どもがソラニン中毒で死亡した例もある。そのスコットランドの例では、別々の18家族61人がジャガイモを食べた後、数時間でソラニン中毒となり、そのうち5歳の子どもが死亡したというもの。ソラニン類の致死量は体重1キログラム当り3mg〜6mgで、1mg〜3mgで中毒症状がでるという。軽い中毒では、下痢、嘔吐やひどい腹痛であり、重症になると意識障害、視覚障害などの症状だという。
・静岡新聞1, 2016-7-21ジャガイモにはソラニン類(ソラニン、チャコニン)が含まれているが、光に曝されるとソラニン類は増大する。昔から、ジャガイモの緑似変色した皮は厚く剥き、芽は確実に取り除くようにいわれてきた。こうした部分にソラニン類が多く、食中毒を起すことがよく知られていたからだろう。
農水省によれば、品種により含まれるソラニン類には違いがあり、メイクイーンに多く、ダンシャクやキタアカリには少なく、ジャガイモを7日間自然光に曝すことで、ソラニン類は3倍から5倍近くにまで増えるという。「ジャガイモは冷暗所で保存する」ということにはちゃんとした理由がある。
調理に当っては次のような注意が必要だとしている。
- ジャガイモの芽を根元を含めて完全に取り除く(多少皮より内側の部分も含めて多めに除く)
- ジャガイモの皮をむく。特に、緑色になっているものは、皮を深くむく(皮より内側の部分も含めて緑色になっている部分は全て除く)
- ジャガイモを茹でてもソラニンやチャコニンは分解しないのでその量は減らない
ジャガイモの芽はソラニン類が多く、発芽した芽を完全に取り除くことが肝要だとされる。日本では士幌町農業協同組合(北海道)が1974年から、ジャガイモの発芽防止を目的としたコバルト60による放射線照射処理を行っている。2010年には、約6千トンが処理されたという。スーパーなどで販売される場合、「ガンマ線照射済み」のラベルが貼られている。添付の写真のガンマ線を照射したジャガイモは、照射後10ヶ月たっても芽は出ていなかった。照射食品反対連絡会は、毎年、春先にスーパーなどで販売される照射ジャガイモの情報を求めている。
ジャガイモの国内生産量は2015年に230万トンで、出荷量は200万トン。そのうち170万トンが北海道で生産されている。(農水省・作物統計)
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