最終更新日:2016年08月11日
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2016年8月

2016.08.11 No.723
■食用GM作物の商業栽培を打ち出した中国
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 中国は8月8日、政府のサイトで公表した文書で「新しい害虫抵抗性の綿とトウモロコシ、除草剤耐性の大豆の商業栽培の推進」を明らかにしたという。食用の遺伝子組み換え(GM)作物の商業栽培推進の立場をより鮮明にしたことになるが、「食の安全」に敏感になっているといわれる中国消費者の支持を得るのは難しいのではないか。

 世界最大の大豆輸入国の中国は15年、国内で1250万トンを生産する一方で8600万トンを輸入したが、その多くはGM大豆だという。中国では国産大豆への信頼は強く、GM大豆の商業栽培には消費者の大きな抵抗が予想されるという。中国大豆産業協会のリュー副会長は、「重要な食用作物の栽培地域にはGM品種は栽培すべきでない」という。中国農業科学院バイオテクノロジー研究所のホワン教授は、こうした点からも、GMトウモロコシの商業栽培が先行するだろうとみているという。

 ・Reuters, 2016-8-10

 ● 商業栽培を徐々に解禁

 中国はこれまで、食用の遺伝子組み換え作物の商業栽培には慎重な姿勢を保ってきたが、昨年の中共中央1号文書あたりから、紆余曲折しながらも、慎重にトウモロコシや大豆などの食用GM作物の商業栽培解禁へ舵を切り出しているかに見える。一時、商業栽培開始が取りざたされたGMイネについて、「短期的」には商業栽培は行わないとはしているが、将来の商業栽培を封じてはいない。

 中国はこれまでにも、害虫抵抗性のGMイネとともにGMトウモロコシの試験栽培を承認していたが、主食作物へのGM品種の商業栽培には、消費者の懸念と強い反対もあり慎重な姿勢をとってきたといわれてきた。こうした「慎重姿勢」に、独自にGMトウモロコシを開発してきた中国のバイオ企業は、国内での展開をあきらめ、米国での販売開始を狙っていると報じられていた。

 中国の遺伝子組み換え政策に関し、2016年の中国共産党中央委員会の中央1号文書では「農業の遺伝子組み換え技術の研究開発と監督管理を強化し、安全を確保した上で慎重に普及させる」とされ、一応、その慎重姿勢を崩してはいない。中国農業部の遺伝子組み換え担当部次長は3月に、「中国の遺伝子組み換え米の開発は進展しているが、短期的には商業規模での栽培は行わない」と述べた、と環球時報が報じている。

 ・中国農業部, 2016-3-9

 しかし一方では、今年2月の中国化工集団公司 (ChemChina)のシンジェンタ買収によって、中国はGM技術を入手し、その慎重姿勢を積極的導入へ転換するのではないかとの見方もあった。

 今年4月、中国政府は本格的に主食作物のGM品種栽培に踏み切る方針、と中国日報が報じた。2016年からの第13次5カ年計画において、害虫抵抗性GMトウモロコシの商業栽培を推進すると、中国農業部の遼・科学技術教育司長が4月13日の記者会見で明らかにしたという。しかしこの時点では、GM大豆の商業栽培については触れられてはなかった。

 ● GMOフリーは認めず

 こうした遺伝子組み換え品種の商業栽培解禁に向けた動きと並行し、GMOフリー地域設置への拒否姿勢も明らかにしている。中国農業部は8月9日、「分離された非遺伝子組み換え地域を設ける」という黒龍江省選出の全人代議員による提案に同意しない、と公式ウェブサイトで明らかにしたという。GMOフリー地域の設置は、遺伝子組み換え食品について消費者の誤解させるもの、というのが拒否の理由だという。

 黒龍江省選出の全人代のタン議員は、2016年の全国両会において、GMO栽培地域を指定するように提案していた。12年の全国両会でも、別の議員が黒龍江省では非GM大豆だけを栽培することを提案していた。

 ・環球時報, 2016-8-10

 ● 違法栽培へ規制強化

 中国は、食用作物へのGM品種導入推進とともに、未承認品種の市場流通への監視強化の姿勢も強調している。当局の禁止にもかかわらず、違法なGM品種の栽培は広がっている。2015年には、新疆ウイグル自治区と甘粛省、海南島で大規模なGMトウモロコシ栽培農場を摘発し破壊したという。昨年9月には、黒龍江省の大豆栽培の10%が違法な遺伝子組み換え品種であると報じられている。グリーンピースは今年1月、遼寧省において違法なGMトウモロコシが広範に栽培されているとする報告書を公表している。

 中国農業部は、こうした違法栽培について、未承認品種の栽培防止のために、開発段階を含めて監視を強化し、特に農村地帯での種子会社と販路の監視を強化するとの方針を明らかにしている。

 ・中国日報, 2016-4-14  ・新華社, 2016-4-18

 この規制強化策が成功するかは疑わしい。10年ほど前から日本や欧州などで、たびたび、中国産の米粉製品などで害虫抵抗性GM品種による汚染が明らかになっているが、昨年も3件の汚染が確認されるなど、一向に収束する気配はない。一度流出すれば、その根絶は難しい。

 ● シンジェンタ買収に市民の反対 商業栽培を懸念

 こうした食用GM作物の商業栽培解禁の動きの中、市民の反対の動きが出ている。中国市民400人は今年4月、中国化工集団公司によるシンジェンタ買収は、中国における遺伝子組み換え作物栽培を招くとして、買収の中止を求める署名を添えた抗議文を国務院へ送った。

 抗議文は「シンジェンタ買収と中国における遺伝子組み換えと農薬による農業の推進は、中国の農業と食料安全保障を破壊する」と述べ、GMO品種が中国の食用作物を汚染すると主張。「中国化工集団公司は、中国国民に最悪の事態を引き起こす自殺的な買収をすぐに中止すべきだ」としているという。背景には、中国政府が飼料用のGM品種の輸入を認めている中、主食作物へのGM規制を緩和するのではないかとする市民の懸念がある。

 ・Reuters, 2016-4-8

 ● 中国からの大豆輸入 新たな「GM汚染」の可能性も

 日本の輸入大豆は年間320万トン。中国からの大豆輸入は少なく、約3万トンでシェアは1%に留まっている。商業栽培の解禁により、中国から輸入される大豆が中国独自開発の品種であった場合、新たな遺伝子組み換え「汚染」が起きる可能性がある。モンサントやシンジェンタなどの品種であれば、すでにその多くは「安全」として承認されているため、たとえ混入があったとしても違反ではなく、混入が明らかになることはない。

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