最終更新日:2016年08月26日
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2016年8月

2016.08.26 No.733
[農薬]
■広がる寡占への懸念 農薬・種子業界の買収と合併
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 昨年5月、モンサントがシンジェンタの買収に乗り出して以来、遺伝子組み換えを含む種子や農薬業界の買収・合併による再編が進んでいるかに見える。昨年12月にはデュポンとダウは合併で合意。シンジェンタが中国化工集団公司(ChemChina)による買収で合意したのが今年2月。バイエルは今年5月、シンジェンタ買収に失敗したモンサントの買収を仕掛けた。この買収が成功した場合、種子と農薬の世界的なシェアは、どちらも約3割近くの巨大企業となる。どの組み合わせでも寡占化の進行が懸念されている。

 ● シンジェンタ買収は「前進」?

 農薬と遺伝子組み換え種子大手のシンジェンタ(スイス)は8月22日、中国化工集団公司による買収に関し、米国の対米外国投資委員会(CFIUS)から認可を受けたと発表した。対米外国投資委員会は、米国の国家安全保障の観点から、国内資本の買収案件を審査する米国財務省の下部機関。2月に明らかになったシンジェンタの買収は、中国化工集団公司が430億ドルで買収し傘下に収めるもので、EUなどの関係各国の独占禁止機関の審査を受けている。シンジェンタは発表で、買収は年内に完了すると楽観的な見通しを述べている。

 ・Syngenta, 2016-8-22  ・Bloomberg, 2016-8-22  ・Reuters, 2016-8-22

 ● 米国 広がる寡占への懸念

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 米国では昨年12月、農薬と種子大手のデュポンとダウが合併で合意した。現在、シンジェンタと同じように、関係各国の独占禁止機関の審査を受けている。米国の農家の間には、この2つの合併と買収で種子と農薬の価格の上昇を懸念する声があるという。

 米国上院のチャールズ・グラスリー上院議員(上院司法委員会委員長)は8月16日、中国化工集団公司のシンジェンタ買収を審査している連邦取引委員会と、ダウとデュポンの合併を審査している司法省に対して、2つの審査を調整するよう求めた。グラスリー議員は、この企業買収と合併が、競争を妨げる可能性があり、より小規模な企業への影響とともに、寡占が進むことによる種子と農薬の価格上昇への懸念を表明した。

 米国内の農業団体などには、中国化工のシンジェンタ買収が米国農業に影響を与え、食料政策の不安定要因になるとして懸念を示しているという。

 ・Reuters, 2016-8-16

 グラスリー議員は8月23日、この2つの合併と買収について、司法委員会の聴聞会を9月下旬に開くと発表した。デュポンとダウの合併と、中国化工集団公司によるシンジェンタ買収についてグラスリー議員は、農民が種子と農薬・除草剤への支払いを増やすことになり、企業のイノベーションへのやる気をそぐもの、と懸念を表明していた。声明では、聴聞会の詳細は明らかにしていない。この聴聞会が司法当局の審査にどのような影響を与えるかについて、米国内の見通しもはっきりしていない。

 ・Charles Grassley, 2016-8-23  ・Reuters, 2016-8-23

 昨年12月、デュポンとダウは対等合併を発表した。統合後は事業ごとに分割して新たに遺伝子組み換え種子や農薬などの農業関連の3つの分離新社を設立するとしていた。2013年の売上高では、種子部門のシェアはモンサント26%に対してダウ+デュポンが25%、農薬部門ではシンジェンタ20%、バイエル18%に次いでダウ+デュポンが16%と、巨大な企業が誕生することになる。この合併発表の直後、カナダを拠点に活動するNGO・ETCグループは、この合併について「次のデモンサント(DeMonsanto)か?」と題する農業セクターの寡占化を警告するレポートを公表した。

 ・ETC Group, 2015-12-15

 ● EU委員会は寡占に厳しい姿勢

 EU委員会の競争政策担当マルグレーテ・ベスタゲール氏は8月11日、デュポンとダウの合併について徹底的な調査を始めたと明らかにした。

 ベスタゲール氏は、「農民の暮らしは、種子と農薬の価格に左右される。これらの合併によって種子や農薬の価格の上昇や、企業のイノベーションが妨げられないことを確認する必要がある」「合併により農薬製品が減ることが懸念される。すでに、いくつかの害虫に対する製品が一つしかない状況に直面している」として、デュポンとダウの合併に懸念を示している。

 この厳しい姿勢は、シンジェンタの買収案件も同じように対処するというシグナルであり、当然、バイエルのモンサント買収も厳しく審査されるだろう、とPoliticoは伝えている。

 ・Politico, 2016-8-11

 ● モンサントはバイエルが買収か

 シンジェンタ買収に失敗したモンサントは、今年3月、バイエルの種子・農薬部門の買収を申し入れた。しかしバイエルは5月、620億ドルでモンサントを買収したいと申し入れた。モンサントはこのバイエルの逆提案を拒否していたが、先ごろ、バイエルの査定を受け入れる契約を結んだ、と関係筋の話をロイターが報じている。バイエルによる買収が完全に消えたわけではなさそうだ。

 このバイエルによる買収が成功した場合、種子で約29%、農薬で約26%のシェア(2013年)に達する。関係各国の独占禁止機関による審査はより厳しくなり、容易には承認されないのではないか。

 ・Reuters, 2016-8-17

 すでに当事者間で合意したデュポンとダウの合併、中国化工によるシンジェンタ買収に加え、交渉中のバイエルによるモンサントの買収と、種子・農薬業界の「再編」が進んでいるかに見える。この「再編」は、より一層の寡占化を進め、EUなどが懸念するように種子や農薬の価格の上昇を招くことになる。加えて、この100年ほどで大きく減った品種をより一層減らすことになる。そして、農民が何を作り(種子主権)、消費者が何を食べるかという当然の権利が侵害され、種子・農薬企業に依存する窮屈な社会へとつながっていく。現状の農業資源を守り次の世代へ伝えていくという、草の根から対抗するいろいろな行動が必要だ。

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