

欧州司法裁判所は11月23日、農薬の安全性評価に関して、申請企業の提出した評価データは公表されなければならないとする、画期的な決定を下したと、グリーンピースが伝えた。
グリーンピースによれば、農薬の安全性に関わるデータは、EUも批准しているオーフス条約(「環境に関する、情報へのアクセス、意思決定における市民参加、司法へのアクセスに関する条約」)に規定する「環境への放出に関する情報」に該当するとしている。決定は、承認機関が危険性を評価する全てのデータを開示しなくてはならず、企業秘密は保護できないとしているという。
昨年3月の国際がん研究機関(IARC)は、グリホサートが「おそらく発がん性がある」とする見解を公表した。一方、欧州食品安全機関などは一斉にIARCの見解を否定し、大きな問題となっていた。その中で、欧州企業監視所(Corporate Europe Observatory:CEO)は昨年12月、グリホサートに関する欧州食品安全機関の評価データの開示を要求していた。これに対し欧州食品安全機関は今年9月、これまで非公開であった評価データの開示を認める方針を明らかにした。
これと並行してグリーンピースや欧州農薬行動ネットワーク(PAN)、欧州企業監視所など8団体は今年4月、欧州食品安全機関に対してグリホサートの評価データを開示を求める要請書を送っていた。
この欧州司法裁判所の決定が最終的に確定すれば、欧州食品安全機関は全ての農薬評価データの公開を迫られることになる。公開が現実となれば、そのデータ自体はもとより評価の妥当性が検討可能となる。画期的な決定であり、欧州における環境団体の大きな勝利といえる。欧州食品安全機関が評価データを公開すれば、世界的な影響はとても大きく、日本の農薬行政にも大きな影響を与えることは確実だ。
・Greenpeace, 2016-11-23 ・Greenpeaceなど, 2016-4-11【関連記事】
- 東アジアは農薬のホットスポット 日本はトップ5
- イタリアのパスタメーカー グリホサート懸念からカナダ産小麦の輸入を削減
- 欧州市民団体 EU禁止農薬の輸出禁止と使用した食品の輸入禁止を求める
- 農薬再評価 ネオニコとグリホサートなど優先14品目を告示
- グリホサート系国内出荷量 2019年度は前年比5%減
- 厚労省 GM添加物2品目を承認 18品目が手続き中
- 富山県産大豆から残留グリホサート 日消連などは散布中止要請の公開質問状
- 欧州委員会 2030年までの生物多様性・農業戦略を策定 有機農業を25%に
- ラウンドアップ損賠訴訟 原告は4万3千人に急増
- 「安全」とされるフルピラジフロンもミツバチに有害