カナダ保健省は11月23日、代表的なネオニコチノイド系農薬の一つであるイミダクロプリドについて、3年間で使用を禁止する方針を明らかにし、意見公募を始めた。発表では、再評価の結果、水路などの水環境におけるイミダクロプリドの濃度が水生昆虫に悪影響を与えるとして、使用を認められないとしている。
カナダ保健省は、影響を受ける種としてカゲロウとユスリカをあげ、これらの昆虫が鳥などの重要なえさとなっていると指摘している。しかし、世界的に問題となっているハチなどの受粉媒介動物への影響には触れていない。
カナダ保健省の提案は、原則として3年で段階的に使用を禁止するが、代替農薬のない場合に限り禁止までの期間を5年に延長するというもの。
90日間の意見公募に当たって、登録の継続提案の場合には、確実に水中のイミダクロプリド濃度が懸念されるレベル以下に減少させる具体的な措置を示す必要がある、とわざわざクギを刺しており、使用禁止への強い意向を示している。
カナダ保健省はまた、ネオニコチノイド系農薬のクロチアニジンとチアメトキサムについても特別の再評価を進めているとしている。
・Health Canada, 2016-11-23EUは近く、2013年より暫定的に使用禁止としているイミダクロプリドを含む3種類のネオニコチノイド系農薬に関する再評価の結論を出す予定となっている。フランスは2018年よりのネオニコチノイド系農薬の全面禁止を決めている。カナダでも、すでにオンタリオ州がミツバチ保護を目的としてネオニコチノイド系農薬の規制を強化している。今回明らかになったカナダ保健省の方針は、世界的にもネオニコチノイド系農薬の使用禁止の方向が、また一つ強くなったといえそうだ。
イミダクロプリドの開発メーカーのバイエルは、このカナダ保健省の提案に対し「失望した」とコメントしたという。
【イミダクロプリド】
1985年に日本特殊農薬製造株式会社(現バイエルクロップサイエンス)が開発したネオニコチノイド系殺虫剤。日本では1992年に農薬登録された。2005年10月現在、116カ国・地域で農薬登録されており、穀類の種子粉衣剤(主としてアブラムシを対象)の他、フロアブル製剤等の散布剤としても使用されているという(食品安全委員会・農薬評価書)。2014年の出荷量は、ネオニコチノイド系農薬のジノテフラン、クロチアニジンに続く3番目である(国立環境研究所・農薬データベース)。
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