GMトウモロコシ栽培を承認せず
EU委員会の動植物・食品・飼料常任委員会は1月27日、遺伝子組み換え(GM)トウモロコシの栽培認可延長と、新たな2品種の栽培承認について加盟国の投票を行い、いずれも承認に必要な特定多数に達せず承認されなかった。この2つの承認案件が必要な賛成票を獲得できなかった背景には、欧州での遺伝子組み換え作物栽培への市民の強い反対がある。
EU委員会には断念か、さらに上訴委員会などでの再審議の道が残っている。EU委員会が承認を断念すれば、EU域内での遺伝子組み換え作物の栽培はできなくなり、EU全域がGMOフリーゾーンとなる。
EUで唯一栽培が認められ、スペインなどで栽培されているモンサントの除草剤ラウンドアップ耐性遺伝子組み換えトウモロコシMON810の栽培認可の期限切れに伴う認可延長は、賛成10か国(人口比47%)で認められなかった。
もう一つの新たな遺伝子組み換えトウモロコシ2品種(シンジェンタのBt11とデュポン・パイオニアの1507)の栽培承認についても、賛成8か国(人口比43%)で認められなかった。
EU委員会の加盟国による投票には特定多数が取り入れられ、承認には、少なくとも16か国と人口比65%の賛成が必要とされている。
欧州議会は昨年、これらの遺伝子組み換えトウモロコシの栽培承認反対決議している。承認に反対している欧州議会内会派の欧州緑グループ・欧州自由同盟(Greens/EFA)は、EU委員会が2つの承認案件を断念するように求める声明を発表した。
英国では、イングランドを除く、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドが遺伝子組み換え作物の栽培禁止を宣言している。英国の遺伝子組み換え反対団体であるGM Freezeのリズ・オニールさんは、英国が承認案件に賛成したことで、英国がEUからの離脱後に、イングランドで遺伝子組み換え作物が栽培されるのではないかと懸念している。トウモロコシの花粉は国境を尊重することはありえないと、イングランドからのトウモロコシの花粉飛散の可能性に警告を発している。
・Greens/EFA, 2017-1-27 ・Sustainable Pulse, 2017-1-27 ・FoE Europe ・Greenpeace【関連記事】
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