

農学研究者などで組織する日本農学アカデミーは3月1日、遺伝子組み換え作物の実証栽培を、国の主導により日本各地で行うように求める提言を発表した。提言では、遺伝子組み換えテンサイを北海道で試験栽培できる環境つくりに国と道が取り組むことと、試験栽培結果の公表して、遺伝子組み換え作物栽培への理解を促進すべきだとしている。
日本農学アカデミーは提言の理由として、遺伝子組み換え作物の商業栽培が始まって20年たち、日本も遺伝子組み換え作物を年間1600万トン輸入し、食品や飼料として利用している。しかし、食品として安全性が確認されているが、商業栽培されていない。また、「農業経営の大規模化、生産性の向上を目指して、遺伝子組換え作物の利点に関心をもつ農業者があらわれつつ」あリ、具体的に北海道での除草剤耐性遺伝子組み換えテンサイの試験栽培に踏み切るべきだとしている。
・日本農学アカデミー, 2017-3-1北海道で遺伝子組み換えテンサイの試験栽培実施を求める動きは、日本農学アカデミーの提言が初めてではない。「北海道農業者の会」は2015年4月、北海道立総合研究機構に対して、遺伝子組み換えのテンサイ、大豆、トウモロコシの試験栽培を実施するよう求める要請書を提出した。このことは、遺伝子組み換え作物推進の国際的な団体である国際アグリバイオ事業団(ISAAA)が報じて明るみに出た。この要請書の提出先とされた北海道立総合研究機は、日本消費者連盟の問い合わせには、要請書の存在も含めて回答を拒否した。(関連記事参照)
昨年12月、池田信夫氏が主宰するアゴラが主催したシンポジウム「成長の可能性に満ちる農業―新技術と改革は日本再生の切り札となるか」が開催された。除草剤耐性遺伝子組み換えテンサイの試験栽培を希望している、北海道のテンサイ農家の小野寺靖氏が、パネラーの一人として登壇した。小野寺氏は、国が特区のように指定して「やる」といえば、除草剤耐性遺伝子組み換えテンサイも栽培できると発言している。このシンポジウムには、毎日新聞の児島正美記者もパネラーとして登壇し、遺伝子組み換え作物の商業栽培を推進すべきとの論を述べた。
・アゴラ, 2017-1-9遺伝子組み換え作物の商業栽培に向けての動きが、いろいろと目立ってきた。いずれも、北海道での除草剤耐性テンサイが具体的な作目として示されている。テンサイはテンサイ糖に加工されるが、原料が遺伝子組み換えテンサイであったとしても「遺伝子組み換え」の表示は不要であり、消費者には分からない。
日本では、モンサントの除草剤グリホサート耐性遺伝子組み換えテンサイが、1品種だけ栽培の承認を受けている。法的には、北海道などの一部の栽培規制条例のある自治体を除き、栽培が可能な状況にある。
北海道は、試験栽培を含む遺伝子組み換え作物栽培について、罰則付きの規制条例がある。また、北海道内での遺伝子組み換え作物栽培には、道民の8割が栽培を懸念しているという調査結果もあり、試験栽培へのハードルは高そうにもみえる。
【関連記事】- ネオニコ系国内出荷量 21年度3.8%増 第二世代は63%増
- 有機農業は排外主義に与しない 参政党に反対する農民と市民が声明
- 冊子『スルホキサフロル 新しいネオニコチノイド系農薬』刊行のお知らせ
- ネオニコ系イミダクロプリド 自閉スペクトラム症様の視知覚障害を引き起こす
- 厚労省:グリホサートの残留基準値を大幅緩和を告示
- メキシコ GMトウモロコシ栽培を禁止 24年までに輸入も段階的に禁止
- 東アジアは農薬のホットスポット 日本はトップ5
- 農薬再評価 ネオニコとグリホサートなど優先14品目を告示
- 米国産ジャガイモ 輸入規制緩和 ポストハーベストも認める
- 輸入小麦の残留グリホサート 豪州産の検出率急増