食品安全委員会は3月14日、シンプロット社(米国)の加熱時のアクリルアミドを低減する遺伝子組み換えジャガイモについて、「ヒトの健康を損なうおそれはない」とする健康影響評価に関する意見公募を行うことを決めた。シンプロット社の遺伝子組み換えジャガイモは、組み込んだ外部遺伝子により、本来の遺伝子の発現を抑制するRNA干渉という遺伝子サイレンシング技術により開発されたもの。この遺伝子組み換えジャガイモは、高温での加熱処理の際に生成されるアクリルアミドが低減でき、同時に収穫時の打撃によって生ずる黒斑も少なくできるという。
・食品安全委員会, 2017-3この遺伝子組み換えジャガイモは、2014年2月以来、食品安全委員会で審議が続いてきた。「安全」との評価書(案)がまとまったことで、意見公募(パブリック・コメント)を経て、早い時期に食品として承認されそうになってきた。
シンプロット社の遺伝子組み換えジャガイモについては、米国農務省が2014年11月に栽培を承認し、15年3月には食品医薬品局が食品として承認している。カナダでも16年3月に承認されている。
米国ではすでに、この遺伝子組み換えジャガイモが市販され、広く流通しているとみられているという。2015年には400エーカー分を米国南東部の10州で売り切り、16年は2千エーカーに拡大するとしていた。
シンプロット社は、米国マクドナルドのジャガイモ納入業者でもあるが、当のマクドナルドは遺伝子組み換えジャガイモを使わないとの方針を明らかにしている。米国消費者の遺伝子組み換え食品離れの流れは大きく変わりそうにもない。米国の有機食品セクターは10%成長が続いている中では、この遺伝子組み換えジャガイモが外食産業で広く使われそうでもない。
遺伝子サイレンシング技術は安全か
シンプロット社のこの遺伝子組み換えジャガイモの安全性について米国の食品安全センターは、「影響を検討せず、決定を急ぎすぎた」と批判している。遺伝子発現を抑制するRNA干渉技術を使った遺伝子サイレンシングの潜在的な危険性がはっきりしておらず、リスク評価手順に問題があるという米国環境保護庁の独立した科学者委員会の結論を引いて決定を急ぎすぎたと指摘している。
消費者庁の表示制度見直しに期待したいが
シンプロットの遺伝子組み換えジャガイモが、加工用として輸入された場合、表示義務のない外食産業で使われても、消費者には知るすべがないことになる。消費者庁は、来年度から遺伝子組み換え食品に関する表制度の見直しを始めるという。消費者庁の本義に立ち返り、消費者の知る権利を最大限優先した表示制度とするならば、韓国などが導入しているレストランなどでの表示義務化に踏み込むべきではないのか。関係業界を慮って「業界庁」などといわれないように消費者庁の奮起に期待したいところだ。
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