最終更新日:2017年3月22日
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2017.03.22 No.781
■GM作物栽培:バイエルは欧州で「敗北宣言」
 ゲノム編集は消費者アタックが必要と
Bayer_1201709115.jpg / Flickr
Bayer / Conan / Flickr

 モンサントの買収で合意したバイエルは、欧州における遺伝子組み換え作物栽培の拡大をあきらめたようだ。「正直なところ、多分、戦いに負けたと思う」と、バイエルの研究開発部門のトップであるエイドリアン・パーシー氏が、同社のフォーラムで発言したとウエスタン・プロデューサー(電子版)が伝えた。20年の間、遺伝子組み換えに反対してきた欧州市民とその運動の勝利といえるだろう。

 パーシー氏は、フランスやドイツが遺伝子組み換え作物の栽培に反対する立場を変えない以上、戦いを続ける意味がないという。パーシー氏はまた、遺伝子組み換え作物が農業分野ですばらしい技術であることを農家が信じることには成功したが、消費者に手を差し伸べなかった。それで消費者に遺伝子組み換え作物のメリットを売り込むことに失敗した。このことは大きな間違いだったと総括しているという。

 パーシー氏は、今後上市されるゲノム編集技術については市民の教育が必要だとして、市民との間にコミュニケーションがなければならないとしているという。

 ・Western Producer, 2017-3-16

 EUでは、モンサントの除草剤耐性遺伝子組み換えトウモロコシMON810だけが栽培を認められ、スペインなど5カ国で栽培されている。EU委員会は2015年3月、遺伝子組み換え作物の栽培に関する権限を加盟各国に委ねるEU指令改正を行った。2015年10月の通告期限にはフランス、ドイツ、ギリシャ、イタリアなど19か国が栽培禁止を決め通告した。EUでは遺伝子組み換え作物栽培禁止が主流となっている。

 EU離脱を予定している英国では、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドは禁止を通告したが、英国は禁止通告を行っていない。このため、イングランドで新たに遺伝子組み換え作物の栽培が行われるのではないかとみる向きもある。英国では2月、新たに光合成機能強化・増収の遺伝子組み換え小麦の試験栽培が承認されている。

新育種技術は安全なのか 消費者に見る目が必要

 バイエルのパーシー氏が言及したというゲノム編集など新育種技術に対する規制は、世界的にもまだグレーな状態にある。バイエルのような推進企業からすれば、表示などの規制がなく、消費者がすんなりと受け入れることが望ましい状況だろう。その点で、遺伝子組み換え作物の導入で消費者とのコンタクトに「失敗」した推進企業の側には、「市民とのコミュニケーション」が重要な課題であり、バイエルの「総括」は、その点を正直に述べたものといえるだろう。

 このバイエルの「総括」と同様な見解を農水省の報告書が明らかにしている。2015年9月に公表された『新たな育種技術研究会報告書の概要 −ゲノム編集技術等の新たな育種技術(NPBT)を用いた農作物の開発・実用化に向けて−』では、「社会的な理解の促進に向けた取組」(33ページ)として次のように述べている。

○分子生物学の最新の知見を応用したものが多いため、研究開発段階から様々な利害関係者との双方向コミュニケーションを進め、それら関係者の期待や不安、懸念等の声を研究開発や実用化のプロセスに活かしていくことが重要。
○また、我が国では、遺伝子組換え技術を利用した農作物や食品に対する不安感が残る中で、国内の農業者や消費者がメリットを実感できる画期的な新品種の開発を進め、開発された現物(新品種)と合わせて、
 @地球環境の変動や食料増産問題への対応など農作物の育種スピードを高めるためのNPBTの導入意義
 A自然界や慣行の育種技術によっても同様の農作物が作出できること
 等について、如何に説得力のある形で情報を発信し、コミュニケーションできるかがポイント。
○このため、引き続き、関連する科学的な知見の整理や、生物多様性影響等に関する見解づくりを一つひとつ積み重ね、そのような科学的な見解をベースに、さらに幅広い有識者、消費者団体、マスコミ、生産者、産業界等とのコミュニケーションを進め、信頼感を醸成していくことが肝要。

 具体的には、各地の科学館、博物館でのイベントへの出展、大学・NPO・研究機関によるサイエンスカフェ、親子実験教室などへの講師派遣を通して双方向のコミュニケーション活動を展開するとしている。

 ・農林水産技術会議事務局, 2015-9

 農水省の報告書は、ゲノム編集により目的以外の部分を切断するオフターゲットが起きる可能性は極めて少ないと結論付けている。しかし、ゲノム編集に代表される新育種技術については、その安全性が検証されているとはいえない。オフターゲットがないかの検証が、必ずしも十分に行われていないという指摘もある。今の状況は、国や推進企業の側からの一方的な情報提供が勝っているようにも思える。

 消費者としては、こうした状況で「提供」される情報を批判的に見る目、考える力が間違いなく必要不可欠となる。

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