

EU委員会はこのほど、2013年12月より一時使用禁止にし、再評価を進めてきたネオニコチノイド系農薬3製剤(クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム)の使用を全面的に禁止する「規則」草案をまとめたと、英国のガーディアン紙(電子版)が伝えた。この提案は5月17、18日の会議において加盟国の投票に付せられ、特定多数の賛成が得られれば数ヶ月以内に施行されるとしている。
ポリティコ(電子版)によれば、屋外に植え替えることなく温室内で栽培される作物については種子処理も使用できるという。またEU規則に基づき、代替手段のない場合の緊急使用も許されるという。
EUは2013年、ミツバチへの悪影響を考慮し、ネオニコチノイド系3製剤(クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム)について一時的な使用を禁止し、再評価を進めてきた。この再評価は、当初予定とされた2015年12月には終わらず、2017年まで延長とアナウンスされていた。再評価の結果、今回の全面禁止の提案となった。
・Guardian, 2017-3-23 ・Politico, 2017-3-23グリーンピース欧州は23日、「ミツバチにとってすばらしいニュース」と歓迎しつつも、「温室という抜け道を閉じて、これらの農薬を禁止すべき」であり、「(EU委員会は)全ての農薬に対して、同じような厳しい基準を適用」し「病害虫管理を生態系農業に移行すべき」とする声明を発表した。
・Greenpeace Europe, 2017-3-23農薬行動ネットワーク・欧州は23日、「ネオニコチノイドは20年の間、ヨーロッパでミツバチと野生の受粉媒介動物を殺してきた。EU委員会のこの提案は、環境保護と養蜂家の長い戦いを認知させる第一歩である。この措置は予防の域を超えている。PAN欧州は、委員会の提案への支持を得るために闘う」とする声明を発表した。
・PAN Europe, 2017-3-23グリーンピース欧州が指摘しているように「全面禁止」といっても、植え替えなしの温室での使用は認められ、必ずしも十分とはいえない。また、ミツバチなどの受粉媒介動物への影響を考慮したリスク評価手法が、全ての農薬に適用されるべきだ、との指摘はその通りだ。
農水省所管の国立研究開発法人の一つである森林総合研究所は昨年11月、受粉媒介動物(送粉者)の減少に関する世界的な共同研究の結果として「送粉者のための10の提言」を発表している。その提言の1として「送粉者に対する農薬のリスク評価を行い、その結果に基づいて農薬の使用基準を制定すること、すでに制定されている場合には規制を強化することが必要」としている。今回のEUの全面禁止の提案は、ミツバチなどの受粉媒介動物へのリスク評価と規制強化であり、この提言の具体化に他ならない。
また、農水省所管の農業環境技術研究所(当時)は昨年2月、日本の受粉媒介動物による経済効果は4731億円であり、その7割が野生種に依存するとの推計を発表している。しかし日本にあっては、野生の受粉媒介動物への影響が考慮されているとは思えない。こうした研究結果が生かされないまま、ネオニコ系農薬の適用作物が拡大されている。
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