EU委員会は3月27日、ダウ・ケミカルとデュポンの合併を条件付で認める決定を明らかにした。デュポンは研究開発を含めた農薬事業の主要部分の売却、ダウは2つの化学薬品の製造工場の売却が条件という。ダウ・ケミカルとデュポンの声明では、デュポンの農薬事業の売却については「交渉中」としている。この合併に関する米国での審査は、まだ終わっていない。
・Dow, DePont, 2017-3-27 ・European Commission, 2017-3-27 ・ブルームバーグ, 2017-3-28巨大農薬・種子企業の合併・買収が進んでいる。一昨年12月、ダウ・ケミカルとデュポンが対等合併して「ダウ・デュポン」となることを発表し、昨年2月、中国化工集団(ChemChina)がシンジェンタの買収を発表した。昨年9月には、モンサントがバイエルによる買収提案を受諾した。これらの合併・買収に関して、関係国での独占禁止法の審査が進んでいるが、EU委員会は3月27日、ダウとデュポンの合併を条件付で承認した。3つの買収・合併案件で初めての決定となる。この結果、世界的な3大農薬・種子企業が登場しようとしている。種子は合併・買収後の3社のシェアが約6割、農薬ではこれら5社にBASFを加えた4社のシェアが7割以上となり、世界的な寡占化が進むことになる。
一方、大地の友・欧州やグレイン、グリーンピース・欧州、農薬行動ネットワーク・欧州、国際有機農業運動連盟・欧州など、欧州の200余りの農業団体やNGOは3月27日、EU委員会ユンカー委員長に、3つの農薬・種子企業の合併と買収を認めないように求める連名の公開状を送った。
公開状は、合併・買収による3つの企業で世界の農薬の7割、商業的な種子の6割をコントロールすることになり、農業と食物システムに対して過度な支配力を持つことになると指摘。また、品種の多様性を減らし、農民の選択の自由と権利を害し農薬への依存を増やすこと、食糧主権への侵害、途上国での飢餓撲滅への打撃であるとも指摘している。
公開状はまた、アグリビジネスとは逆の小規模で持続可能な生態系農業への支持と支援などを提案している。
・Friends of the Earth Europe ほか, 2017-3-27【関連記事】
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