森林研究・整備機構(旧森林総合研究所)、国立環境研究所などの研究チームは3月1日、セイヨウミツバチに比べてニホンミツバチが全般的に農薬に弱く、中でもネオニコチノイド系農薬のジノテフランに一番弱いとする研究結果を専門誌に発表した。ジノテフランは三井化学が開発したネオニコチノイド系農薬で、2015年度のネオニコチノイド系農薬の出荷量の約4割を占めている。
ネオニコ系ジノテフランが最も毒性が強い
研究は、ネオニコ系農薬(アセタミプリド、イミダクロプリド、クロチアニジン、ジノテフラン、チアメトキサム)、浸透性農薬のフィプロニル、有機リン系のダイアジノンなど11種類の各種農薬に接触毒性を比較したもの。48時間後の接触による半数致死量毒性(LD50)は、ニホンミツバチでは、最も少ないジノテフランが0.0014(μg/bee)であったのに対して、セイヨウミツバチでは29倍の0.041(μg/bee)であったという。クロラントラニリプロールを除く10剤の平均でも、セイヨウミツバチの半数致死量はニホンミツバチよりも14.3倍高かったという。ニホンミツバチへの影響がより大きいことを示している。
・Journal of Economic Entomology, 2017-3-1農業環境技術研究所は昨年2月、2013年時点での農業における花粉媒介動物(送粉者)の年間貢献額が推定4731億円で、その7割が野生種によるものだとする研究結果を発表した。農水省は昨年7月、2013年から3年間のミツバチの大量死に関する調査結果を発表し、その多くが水田近くで見つかり、検出された農薬の多くが斑点米カメムシ防除用のネオニコ系農薬だったとしている。自らの調査でも、大量死の原因が水田で使用される農薬と認めた。飼養されているミツバチに影響が出ているということは、野生生物への影響も当然のこととして考えられる。
ジノテフランはEUでは未承認。米国は2015年4月、新規登録を中止している。一方、日本ではニホンミツバチのような野生の送粉者への影響を考慮した規制の姿勢はみられない。農水省は、ミツバチへの影響を考慮するようにという注意書きと、養蜂家への情報提供で十分だとしている。
農林水産消費安全技術センターが公開している農薬登録情報提供システムによれば、ジノテフランを含む農薬は128製品が登録されている(2017年4月13日現在)。米国が新規登録を中止した15年4月以降でも、11製品が登録され、登録期限の近い17製品も更新予定だとしている。
・農林水産消費安全技術センター国立環境研究所の農薬データベースによれば、ジノテフランは2002年に発売されて以来、急速に出荷量が増え、2015年度の出荷量は167トンとネオニコ系7剤の約4割を占め最大となっている。浸透性のフィプロニルとエチプロールを加えた出荷量でも、その合計486トンの約35%を占め、これらの農薬では最も出荷量が多い。
・国立環境研究所
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