始まった遺伝子組み換え表示制度検討会
日本の遺伝子組み換え食品表示制度が始まって15年。消費者庁は4月26日、遺伝子組み換え食品表示制度の見直しに向けた有識者による検討会の第1回会合を開いた。冒頭、挨拶に立った松本内閣府特命担当相(消費者及び食品安全、防災)は、「事業者の実行可能性」が前提であると強調した。10名の検討会委員の自己紹介と意見が述べられたが、表示制度の拡充に積極的な意見はほとんど見られなかった。
消費者庁からは、遺伝子組み換え食品に関する世界的な状況や、消費者意識調査結果、EU諸国の制度調査結果などが報告された。今後、消費者団体や事業者から3回のヒヤリングを行うことが提案され承認され、ヒヤリングする団体は事務局に一任となった。その後、秋以降に議論を重ね、年度内に報告書をまとめるというスケジュールが示された。
日本の表示制度の見直し・拡充については、大きく次の3点に集約できる。一つは意図せざる混入率の引き下げ、二つには最終製品で組み換えDNAが検出されない表示非対象製品への拡大、三つには上位3位以内で重量が5%以上に限定された表示対象の全成分表示への拡大である。こうした点について、消費者庁はいくつかの調査結果を明らかにした。
消費者庁は昨年、分別管理による混入率の実態調査を行った。その結果、米国とカナダの31か所のエレベーター施設、日本の8か所のサイロから入手したサンプルによる分析で、混入率の最大は、分別管理された非GMの大豆で0.3%、トウモロコシで4.1%であったとしている。
消費者庁はまた、最新技術で最終製品から組み換えDNAが検出されないかの検討も行った結果を明らかにした。現在、表示対象外となっているトウモロコシ加工品のコーンフレークの5件のサンプル全てから検出できたが、しょう油や油からは検出できなかったという。
消費者庁は、今年1月から2月にかけて行ったEUと独仏伊3か国の表示制度のヒヤリング調査結果も報告した。混入率0.9%未満、全成分表示と日本の表示制度を上回るEUの制度では、最終製品から組み換えDNAが検出されなくとも表示を義務としている。この制度のついてEU委員会保健・食品総局は、書類の確認と原材料の分析検査で監視は可能であるとしていると回答したという。
・消費者庁検討会の議論では、たびたび何人かの委員から「事業者の実行可能性」が指摘された。また、武石委員(食品産業センター企画調査部部長)は、業界団体の立場から表示制度の見直しに反対する意見書を提出し、これ以上の拡大は企業負担となり業績悪化に繋がりかねないと、制度の拡充をけん制する発言があった。
一方、夏目委員(全国地域婦人団体連絡協議会)は、消費者の選択手段としての表示制度の拡充に言及した。現在の表示制度は分かりにくく、ほとんどの加工食品が対象外であることは問題であり、議論すべきだと述べた。夏目委員はまた、表示は消費者が判断し選択するには必要なもので、事業者に難しいとしても前向きに考えるべきだと指摘した。
分別管理したとしても非GMトウモロコシの混入率が最大4%であったというデータや各委員の発言からは、消費者の選択=知る権利を担保するものとしての表示制度を積極的に拡充していこうとする意欲はあまり感じられなかった。残念ながら、明確に、表示制度の拡充に積極的な意見の述べたのは夏目委員一人であった。
遺伝子組み換え食品の表示制度の拡充で消費者の知る権利をより担保する方向へ、今後の議論が進むことを期待したい。
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