規制機関が承認
インドの遺伝子組み換え規制機関である遺伝子工学評価委員会(GEAC)は5月11日、インドで初の食用遺伝子組み換え作物となる遺伝子組み換え(GM)マスタードの商業栽培を承認した。デリー大学で開発された遺伝子組み換えマスタードは15年12月、商業栽培が申請されていた。この承認により、商業栽培は環境大臣の判断を待つだけとなった。しかし商業栽培には、遺伝子組み換え作物に反対する農民組織などが反対運動を展開してきた。政権与党の支持組織も反対している。
この遺伝子組み換えマスタードについて遺伝子工学評価委員会が12日に公表したFAQよれば、リリースされるのは一代交配種で従来より収量が多いとしている。また、除草剤を使わないよう推奨するとしている。一方では、除草剤グルホシネート耐性という情報もある。
インドではこれまで、遺伝子組み換え作物は綿だけが栽培されてきた。2016年の栽培面積は、前年より約100万ヘクタール減少し約1千万ヘクタール。食用の遺伝子組み換え作物は栽培は認められていないが、2010年に害虫抵抗性(Bt)遺伝子組み換えナスの商業栽培が承認寸前までになった。強い反対運動の中、遺伝子工学評価委員会が商業栽培を承認したものの、環境大臣が拒絶していた。今回、商業栽培が承認された場合、インドでは初めてとなる食用の遺伝子組み換え作物となる。
インド連邦政府はこれまでに、最高裁の同意なく遺伝子組み換えマスタードを承認しないとの方針を明らかにしているという。
GEACは、この承認が熟慮の結果だとしたとしている。700以上のコメントがよせられ、それらの懸念の全てに対応したという。
政権与党の支持組織は商業化に反対
このGMマスタードをめぐっては、インドの20州の400以上の団体からなる持続的農業連合など、遺伝子組み換え作物に反対する農民団体、環境団体などが承認しないよう求める運動を展開してきた。インド最大のヒンドゥー至上主義団体の民族義勇団(RSS)傘下のスワデーシー・ジャガラン・マンチも強く反対しているという。民族義勇団はモディ首相の支持母体でもあり、インドの現政権与党であるインド人民党は、遺伝子組み換え食品について、安全性に対する懸念が払拭され、コンセンサスが得られるまでは認めないことを選挙公約としていたという。
持続的農業連合 商業栽培拒否求める
GEACの承認に、GMマスタードの商業栽培反対の運動を展開してきた持続的農業連合は、環境大臣に承認しないよう求める声明を発表した。
同連合のクルゲンティー議長は、「GEACは、市民の健康と環境に関して非科学的で無関心であることを再びはっきりさせた。市民を遺伝子組み換え食品の危険性から守るという点で、役に立たなかった」とした。
クルゲンティー議長はまた、「このGMマスタードについて、環境大臣は責任ある意思決定を行うよう求める。7年前、Btナスは拒絶された。規制当局が拒絶しないとしても、少なくとも環境省の任務を果たすべきである。これは、インド人民党政府が選挙公約に関し信頼されるかどうかについてのテストである。最高裁判所の賛否なく承認を進めるつもりではないというが、政府が裁判所の背後に隠れる理由はない。このGMOの危険性を考慮すれば、かなり簡単な決定である。大臣が除草剤耐性遺伝子組み換えマスタードの商業栽培を拒否するように求める」としている。
・Live Mint, 2017-5-11 ・Times of India, 2017-5-12 ・IndiaGMInfo, 2017-5-11 ・Indian Express, 2016-10-5【関連記事】
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