フライドポテトや惣菜向けか
食品安全委員会は5月30日、米国・シンプロット社の遺伝子組み換えジャガイモは「ヒトの健康を損なう恐れはない」とする評価を正式に決定し、厚労省への通知を決めた。近く厚労省は承認すると思われる。この遺伝子組み換えジャガイモは、生物多様性での申請がないところから、承認後は冷凍品などの形で輸入され、フライドポテトや惣菜に加工されるのではないか。
食品安全委員会はまた、この遺伝子組み換えジャガイモの飼料としての評価は不要で、このジャガイモを食べた家畜由来の畜産品も安全とする評価を正式に決め、農水省への通知を決めた。
・食品安全委員会, 2017-5-30今回「安全」とされたシンプロット社の遺伝子組み換えジャガイモは、高温での加熱処理の際に生成されるアクリルアミドが低減でき、同時に収穫時の打撃によって生ずる黒斑も少なくできるという。組み込んだ外部遺伝子により、本来の遺伝子の発現を抑制するRNA干渉という遺伝子サイレンシング技術により開発されたもの。米国・食品安全センターは、安全性がはっきりしていないと指摘し、懸念を表明している。
米国のジャガイモを生産量は年間2千万トンと、世界5位のジャガイモ大国の一つでもある。日本は米国産ジャガイモの主要相手先であり、冷凍ジャガイモを年間約20万トンを輸入している。日本は、害虫ジャガイモシストセンチュウを理由として生鮮ジャガイモの輸入を禁止してきたが、2006年に、ポテトチップス用に輸入を認めた。2月から7月に限定して、年間約2万トンの生鮮ジャガイモが輸入されている。乾燥ジャガイモは約4万トンが輸入されている。
農畜産業振興機構の調査レポートによれば、冷凍ジャガイモは主に外食産業向けのフライドポテトや量販店の総菜に使用されているという。乾燥ジャガイモは全て業務用であり、成型ポテトチップス、インスタントスープ、冷凍コロッケ、ポテトサラダなどの総菜用マッシュポテトや養魚用の飼料などにも使用されているという。
・農畜産業振興機構調査情報部, 2017-1 ・農畜産業振興機構調査情報部, 2017-2シンプロットの遺伝子組み換えジャガイモは、フライドポテトなどの加工用として輸入され、ファミレスなどで提供されることになるのではないか。レストランなどにおける遺伝子組み換え食品に関する表示規制のない現状では、知らないうちに食べてしまうということになりかねない。「何を食べるか」という、消費者の選択権が奪われることになる。韓国などがすでに実施してる、レストランなど外食産業での義務的表示が必要不可欠になる。同様に、対面販売されるコロッケなどの惣菜に使用された場合でも、表示規制がない現状では知らないうちに食べていたということになりかねない。こうした問題点は、消費者庁が進めている、遺伝子組み換え表示の制度見直しの論点には上がってきていない。課題にすらなっていないことも大きな問題だ。
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