世界一の砂糖生産国のブラジルはこのほど、サトウキビの害虫であるサトウキビメイガ(Diatraea saccharalis)に抵抗性のある遺伝子組み換えBtサトウキビの商業栽培を承認したという。
ロイターによれば、遺伝子組み換えBtサトウキビはブラジルのCTC社によって2015年に承認申請が出されていたもので、害虫抵抗性の遺伝子組み換えトウモロコシと同じように、微生物の遺伝子を組み込み、その殺虫毒素でサトウキビの芯に入り込むサトウキビメイガの幼虫を殺そうというもの。ブラジルのサトウキビメイガによる被害額は50億リアル(約150億円)という。Btサトウキビにより、この被害を軽減できるとしている。
CTCは、遺伝子組み換えサトウキビによる製品出荷を、3年後から開始できるとみているという。ブラジルのサトウキビは1000万ヘクタールで栽培されているが、10年後には最大15%で栽培される可能性があるという。
CTCはこのBtサトウキビ由来の砂糖について、米国とカナダに承認を求めて申請したという。また、中国やインド、日本、ロシア、韓国、インドネシアに承認を求めるだろうとしている。日本では、砂糖は加工により組み換えDNAが検出されないとされ、表示は不要となっている。
害虫抵抗性の遺伝子組み換え作物はトウモロコシやワタで「実用化」され、米国の遺伝子組み換えトウモロコシの多くがBt組み換え品種となっているが、Btに抵抗性を獲得したスーパー害虫が出現し問題となっている。CTCのBtサトウキビにも、いずれ抵抗性を獲得したスーパー・サトウキビメイガが出てきても驚かない。
CTCは将来的に、遺伝子組み換えによる除草剤耐性サトウキビと、別のサトウキビ害虫に抵抗性のある品種を開発するともしているという。
・Reuter, 2017-6-8サトウキビメイガを天敵で防除
サトウキビ害虫のサトウキビメイガ(Diatraea saccharalis)防除に、ブラジルでは天敵のズイムシサムライコマユバチ(Cotesia flavipes)を使っている農園が、農薬メーカーのBASFが紹介している。ブラジルで4万ヘクタールでサトウキビを栽培している製糖会社のウジーナ・サン・ジョアン社は、自社でズイムシサムライコマユバチを生産して、農場に放しているという。遺伝子組み換えでも農薬でもなく、天敵で防除できるであれば、生態系への影響も少なくできる。
・BASF, 2016-8-19ブラジル産砂糖の輸入はわずか
ブラジルの砂糖生産量は約4千万トンと世界1位(農畜産業振興機構・統計資料)。しかし、日本のブラジル産粗糖輸入量はわずか550トンと少ない(財務省・貿易統計)。日本の粗糖輸入量は2016年に合計約126万トン。輸入先は、ほぼオーストラリアとタイの2か国となっている。米国産砂糖の輸入も約250トンと少ない。
米国産砂糖の半分は組み換えビートが原料
CTCは除草剤耐性組み換えサトウキビの開発を予定しているという。すでに米国では2008年、モンサントの除草剤ラウンドアップ耐性遺伝子組み換えビートの商業栽培が始まり、今では95%のビートが遺伝子組み換えだという。米国の砂糖生産量は約840万トン。その約半分が遺伝子組み換えビートが原料とみられている。しかし、米国消費者の遺伝子組み換え食品離れから、ビート砂糖はシェアを落としているともいう。
【関連記事】- ネオニコ系国内出荷量 21年度3.8%増 第二世代は63%増
- 有機農業は排外主義に与しない 参政党に反対する農民と市民が声明
- 冊子『スルホキサフロル 新しいネオニコチノイド系農薬』刊行のお知らせ
- ネオニコ系イミダクロプリド 自閉スペクトラム症様の視知覚障害を引き起こす
- 厚労省:グリホサートの残留基準値を大幅緩和を告示
- メキシコ GMトウモロコシ栽培を禁止 24年までに輸入も段階的に禁止
- 東アジアは農薬のホットスポット 日本はトップ5
- 農薬再評価 ネオニコとグリホサートなど優先14品目を告示
- 米国産ジャガイモ 輸入規制緩和 ポストハーベストも認める
- 輸入小麦の残留グリホサート 豪州産の検出率急増