米国連邦地裁は6月23日、シンジェンタに対してトウモロコシ農家の受けた損害として2億ドル余りの支払いを命ずる判決を下した。米国・カンザス州などのトウモロコシ農家が、中国で未承認の遺伝子組み換えトウモロコシの種子を販売したことより損害を受けたとして、損害賠償を求め集団で提訴していた。シンジェンタは上訴するという。
中国は2013年11月、未承認のMIR162の混入を理由に約6万トンの米国産トウモロコシの輸入を禁止した。この輸入拒否を皮切りに中国は、2014年12月に承認するまでに約140万トンの米国産トウモロコシの輸入を拒否したという。その結果、米国内のトモロコシ価格が急落し、トウモロコシ農家が損害を被ったとして裁判に訴えていた。全米20以上の州のトウモロコシ農家35万人が総額130億ドルの賠償を求めて提訴しているという。
・Bloomberg, 2017-6-23 ・Reuters, 2017-6-23最初に中国が輸入拒否したトウモロコシは、すでに承認されていた日本と韓国に向け再輸出されたとロイターが報じている。それ以降の輸入拒否されたトウモロコシの多くも、日本や韓国に向けられたとみられていた。
この中国の輸入禁止措置は、食用や飼料用の遺伝子組み換え作物の貿易に関しては、主要輸入国の承認がないことには商業栽培が始められないことを意味している。それとともに、米国において、主要国で未承認品種について、分別が機能せず混入が起きていたことも明確になった。
日本は年間約1500万トンのトウモロコシを輸入している。そのうち約1千万トンが飼料用に向けられている。トウモロコシは1140万トン(約75%)が米国から、370万トン(約24%)をブラジルから輸入している。米国もブラジルも大半が遺伝子組み換え品種であり、日本に輸入されるトウモロコシの多くが遺伝子組み換え品種と推定されている。例えば、台湾のように、輸入時の申告で遺伝子組み換えであるか否かを識別できるようにすれば、輸入作物の遺伝子組み換え比率をはっきりさせることができる。
【関連記事】- ネオニコ系国内出荷量 21年度3.8%増 第二世代は63%増
- 有機農業は排外主義に与しない 参政党に反対する農民と市民が声明
- 冊子『スルホキサフロル 新しいネオニコチノイド系農薬』刊行のお知らせ
- ネオニコ系イミダクロプリド 自閉スペクトラム症様の視知覚障害を引き起こす
- 厚労省:グリホサートの残留基準値を大幅緩和を告示
- メキシコ GMトウモロコシ栽培を禁止 24年までに輸入も段階的に禁止
- 東アジアは農薬のホットスポット 日本はトップ5
- 農薬再評価 ネオニコとグリホサートなど優先14品目を告示
- 米国産ジャガイモ 輸入規制緩和 ポストハーベストも認める
- 輸入小麦の残留グリホサート 豪州産の検出率急増