最終更新日:2017年7月1日
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2017.07.01 No.828
■ネオニコチノイド系農薬 初の大規模屋外調査でも有害とダメ押し
bee_rape_s.jpg / Flickr
ナタネとミツバチ / G.S.Martin / Flickr

 米国の科学誌サイエンスは6月29日、ネオニコチノイド系農薬がミツバチやマルハナバチに有害であることを明らかにする2つの研究結果を掲載した。その一つは、バイエルクロップサイエンスなどが資金提供したもので、英国、ドイツ、ハンガリーで行われた大規模な屋外調査の結果である。これら二つの研究結果は、折しも、イミダクロプリドなど3種類のネオニコチノイド系農薬の使用禁止を決めようとしているといわれるEUの決定にも影響を与える可能性がある。

初の大規模屋外調査でコロニー減少を確認

 サイエンス誌が掲載した研究の一つは、英国政府系研究機関の生態水文学研究所(Centre for Ecology & Hydrology)などの研究チームによるもので、バイエルクロップサイエンスとシンジェンタの資金(270万ポンド、約4億円)による、初の大規模な屋外研究。英国、ドイツ、ハンガリーのあわせて2千ヘクタールの農場を使って行われたという。2015年からの研究の結果、ネオニコチノイド系農薬に曝されたミツバチは、その越冬数が最大24%減少したという。こうしたコロニーに減少は英国とハンガリーで確認されたが、ドイツでは確認されなかったという。

 研究チームは、農薬企業に資金提供されたが、研究は「独立」しているとして利益相反を否定している。生態水文学研究所は、サイトの選択基準など研究スキームの詳細を、そのサイトで公表している。

 バイエルクロップサイエンスとシンジェンタは、受け入れがたい研究結果だとコメントしているという。バイエルのミツバチ関連サイトには、この研究結果に関するコメントの掲載はまだない。

 ・Science, 2017-6-29  ・Centre for Ecology & Hydrology, 2017-6-29  ・Centre for Ecology & Hydrology

カナダの研究は 有毒性と水系汚染の可能性を示す

 もう一つの研究は、カナダ・ヨーク大学などの研究チームによるもので、ネオニコチノイド農薬で汚染された花粉を与えられた幼虫は、平均寿命が23%低かったというもの。トウモロコシ圃場周辺の蜂場と遠くはなれた蜂場を観察した結果、ミツバチの集めたネオニコチノイド農薬で汚染された花粉のほとんどが、トウモロコシのものではなかったという。また、汚染された花粉は、5月から9月の長い期間にわたっていたことが分かったという。ミツバチの集めた野生植物の花粉の残留農薬濃度を測定した後、クロチアニジンをその濃度に調整した花粉を幼虫に与えて実験した結果、寿命が短くなることを確認したとしている。

 この野生植物の汚染について研究チームは、「水溶性であるネオニコチノイドが、農場から周囲の環境に流出し、蜂にとって好ましい植物に取り込まれることを示している」とコメントしていて、水系への汚染が汚染拡散の原因となりうることを示している。カナダ・オンタリオ州は今年から、トウモロコシ圃場でのネオニコ種子処理を禁止している。

 ・Science, 2017-6-29  ・York University, 2017-6-29  ・共同, 2017-6-30

EU委員会の判断にも影響

 この二つの研究結果について、欧米の科学関連サイトが記事を掲載している。中でもネーチャーは、「ネオニコ反対派に新たな弾丸を与えた」と書いているほどだ。英国生態水文学研究所などの研究が、バイエルとシンジェンタの資金を使ってのものという点も注目されている。とかくバイアスがかかるとみられているこうした研究でも、農薬企業が受け入れがたい結果だったというところは興味深い。

 EU委員会は2013年、ミツバチなどへの有害性から、クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサムの3種類のネオニコチノイド系農薬の一時的な使用を禁止し再評価を行ってきた。当初の2年間の予定を大幅に超過したものの、近く、屋外使用の全面的禁止を決めるとみられている。この決定にも影響を与える可能性がある。

 ・The Scientist, 2017-6-29  ・Nature, 2017-6-29

 グリーンピース・欧州は6月29日、生態水文学研究所の研究について声明を発表。「研究室での研究結果が実際の現場で確認されたもので、農薬企業のネオニコチノイド系農薬が害がないという主張に根拠がないことを示している」とコメントしている。

 ・Greenpeace Europe

 日本では、新たなネオニコチノイド系農薬のスルホキサフロルの承認作業が進んでいる。厚労省の残留農薬基準値の設定はほぼ終わった模様だ。日本の農薬行政は、残留基準値の緩和を進め、新規のネオニコチノイド系農薬の承認に前のめりな状況にあるようにみえる。欧州とカナダの二つの研究結果が、こうした流れにブレーキをかけうるのか、はなはだ先行きは暗いといわざるを得ないのは残念だ。

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