

遺伝子組み換えサケを開発してきたアクアバウンティは8月4日、創業以来初めて約4.5トンをカナダで販売し、約5万ドルの収益を上げたと発表した。世界で初めて食用の遺伝子組み換え動物が販売されたことになる。この遺伝子組み換えサケは、単に成長が早いというだけで、特段の機能性が加えられたり、強化されたりしているわけではない。カナダ政府は昨年5月、この遺伝子組み換えサケは従来のサケと同等であるとして食品として承認していた。ネーチャーによれば、同社は1ポンド当り5.3ドルで販売したという。
カナダでは先ごろ、遺伝子組み換え食品表示法案が否決されていて、未だに表示は不要である。アクアバウンティは、具体的な販売先を明らかにしていない。同社の公表した決算データによれば、4月から6月の第2四半期の間に販売された模様だ。
カナダでは、アクアバウンティの遺伝子組み換えサケの養殖施設は認可されておらず、パナマの施設で養殖されたものと思われる。同社は2013年、最大10万個の遺伝子組み換えサケの卵の製造について認可を得ている。当初の計画では、パナマの山中に設けた施設で養殖し、米国やカナダで販売するとしていた。しかし、同社は今年6月、カナダ東南部のプリンスエドワード島の同社施設内における、遺伝子組み換えサケ用の年産250トン規模の養殖施設建設の認可をプリンスエドワード島政府から得ている。同社はまた、米国でも養殖拠点を計画し、インディアナ州の養殖施設の認可を待っている状況だという。
プリンスエドワード島の施設で遺伝子組み換えサケの養殖を始めるには、連邦政府による養殖の環境リスクアセスメントを経て、新たな承認を得る必要があるという。
プリンスエドワード島の住民はもとより、カナダの環境保護団体などはこの養殖計画に反対している。今年6月には、カナダ・バイオテクノロジー行動ネットワーク(CBAN)など12団体は、連邦政府に対して、プリンスエドワード島での養殖について、きちんと環境リスクアセスメントを行うよう求める要請書を送った。この遺伝子組み換えサケが自然界に流出した場合、野生のサケは数十世代で絶滅する可能性があるという。
・AquaBounty, 2017-8-4 ・Nature, 2017-8-4 ・Canadian Biotechnology Action Network, 2017-7-26 ・CBAN ほか, 2017-6-6アクアバウンティの遺伝子組み換えサケについて、日本での食品としての承認申請はまだ出されていない。しかし、遺伝子組み換え食品の表示が不要のカナダから加工食品として紛れ込んだ場合には、外観的には識別は不可能であり、知らずして食べてしまう可能性もでてくる。
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