

ロンドン大学などの研究チームは8月14日、ネオニコチノイド系農薬の一つチアメトキサムに曝露したセイヨウオオマルハナバチの女王蜂の4分の1が産卵しないことが分かった、とネイチャー・エコロジー・アンド・エボリューション(Nature Ecology and Evolution)誌に発表した。研究チームは、ネオニコチノイド系農薬がマルハナバチのライフサイクルにおける重要な段階に影響を及ぼし、個体数に重大な影響を及ぼす可能性があることを示しているとしている。マルハナバチは、作物の花粉を媒介する重要な野生種の一つである。
この研究結果は、マルハナバチの女王蜂が越冬し生き残ったとしても、群(コロニー)を作ることができないことを示している。この結果を受けて、ロンドン大学のヤンセン教授は、「ネオニコチノイド系農薬は、世界的に最も広く使われている。これらの継続的な使用を認める前に、野生生物に対する効果を理解することは不可欠」という。
共同執筆者のレイン教授(カナダ・ゲルフ大学)は、「(ネオニコチノイド系)農薬がミツバチに破壊的な影響を及ぼす可能性を示している。緊急に、農薬がどのように他の種に影響を及ぼしているのか調査する必要がある」としている。
・Nature Ecology & Evolutio, 2017-8-14EU委員会は2013年、今回の研究対象であるチアメトキサムに加え、イミダクロプリドとクロチアニジンを、ミツバチに影響が大きいとして一時的に使用禁止として再評価を進めている。EUは、これら3種類のネオニコチノイド系農薬の禁止の方針を固めたとも報じられている。
今年6月には、英国の生態水文学研究所などの研究チームが、バイエルなどの研究資金による欧州で行った大規模な屋外調査で、ネオニコ系農薬に曝されたミツバチはその越冬数が最大24%減少したと発表している。このほかにも、ネオニコチノイド系農薬が、ミツバチやマルハナバチのような受粉媒介動物(送粉者・ポリネーター)に大きな影響を与えるという研究結果が積み上がってきている。
農水省は、これまでの調査の結果からミツバチへの影響を認めながら、欧米とは使い方が違うこと理由にして実効性のある規制に踏み込んでいない。さらには、新たなネオニコチノイド系農薬のスルホキサフロルの農薬登録を行おうとしている。「持続可能性」という言葉が空虚に聞こえる。
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