EU委員会は9月26日、福島原発事故に伴う放射能汚染への懸念から日本産食品の輸入規制について、福島県産のコメなどの食品への規制緩和を決定し年内に施行すると報じられている。EU委員会は、9月15日に規制緩和案を公表したが、26日の決定については明らかにしていない。
EUは原発事故後、福島県など東北・中部の13県からの特定食品に対して、日本政府の放射性物質検査証明書を要求し、輸入国にてサンプル検査を行うよう規制を強化していた。共同などでによれば、福島、秋田、岩手、宮城、山形、茨城、栃木、群馬、千葉、長野各県のコメや水産物の一部、山菜類などについて輸入規制が緩和されるという。
EU委員会の輸入規制緩和に対して欧州議会は9月13日、規制緩和案に反対し、改正案を撤回し新たな改正案を年内に策定するよう求める決議を賛成543票、反対100票、棄権43票で採択している。この決議に拘束力はないものの、圧倒的多数での議決は、日本産農産物・食品の放射能汚染に対する懸念が強いことの表れだ。
決議は、日本政府の検査証明書のデータその妥当性に疑問を示している。これまでに輸入された食品に関するデータはあるものの、生データにはアクセスできず、その妥当性を検証できないからだという。そして、EU市民の健康を守るのに十分であるかどうかを検証することは、非常に困難であると、はっきりと指摘している。言い換えれば、日本政府の「保証」の信頼性に疑いがあるということを婉曲に指摘している、ということではないか。
決議はまた、東京電力・福島第一原発の100万トンの汚染水の海洋放出の方針について、沿岸で漁獲された水産物の食品安全性レベルに深刻な悪影響を及ぼす可能性があると指摘している。福島県内の避難指示地域への帰還により、汚染された水田での稲作が再開され汚染されたコメが輸入される可能性も規制緩和反対の理由の一つとしている。
その上で決議は、EU規則の附則に定めた日本産食品に含まれる放射能基準(現行の基準は日本の基準と同じ)の引き下げも求めている。
EU議会決議が、汚染水の海洋放出への懸念に言及していることは注目されてもよい。今回の欧州議会の決議の前提には予防原則がある。この点が、日本政府の放射能汚染対策とは大きく異なっている。汚染を拡大させないという点でも、汚染水の海洋放出はやめるべきだ。
地 域 | 規 制 対 象 | 備 考 |
---|---|---|
福島 | きのこ類、水産物(活魚、海藻及びホタテを除く)米、大豆、柿、フキノトウ、フキ、タラノキ属、タケノコ、ワラビ、ゼンマイ、クサソテツ、コシアブラ | ※1 |
新潟、山梨、静岡 | きのこ類、コシアブラ | ※1 |
秋田、山形、長野 | きのこ類、タラノキ属、タケノコ、ゼンマイ、コシアブラ | ※1 |
岩手、宮城、茨城、栃木、群馬、千葉 | きのこ類、水産物(活魚、海藻及びホタテを除く)、タラノキ属、タケノコ、ワラビ、ゼンマイ、クサソテツ、コシアブラ | ※1 |
47都道府県 | 上記の県ごとの放射性物質検査証明の対象品目の使用割合が50%を超える食品及び飼料 | ※1 |
福島を除く46都道府県 | 上記の品目のうち、上記の放射性物質検査証明の対象となる県以外で生産・加工されたもの、又はそれらの使用割合が50%を超える食品及び飼料 | ※2 |
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