

農研機構は10月13日、遺伝子組み換え花粉症緩和米を提供する慈恵医大など2か所で臨床研究を始めると発表した。農研機構は今年7月、このGM米について、用途開発とその実用化を加速するためとして、外部の大学や研究機関の提案を公募していた。今回の発表はこの公募への提案を審査した結果としているが、何件の応募があったかは明らかにしていない。
農研機構よりGM花粉症緩和米のサンプル提供を受けるのは、東京慈恵医大と大阪はびきの医療センターの2か所。慈恵医大は、2015年からこのGM米の治験を行っていると報じられている。もう一つの大阪はびきの医療センターは、旧大阪府呼吸器・アレルギー医療センターで、「呼吸器・アレルギー性疾患、肺がん、感染症の大阪府域の中核的役割を果たしています」としている。
農研機構は、2020年のGM花粉症緩和の商業化を目指して開発しているとしてきたが、これまでその詳細を明らかにしていない。また、今回サンプル提供を決めた提案の内容も明らかにしていない。
・農研機構, 2017-10-13農研機構はかつて、この遺伝子組み換え米を「花粉症緩和米」と称していたが、現在は「スギ花粉米」と名づけている。農水省は、当初、このGM米を特定保健用食品(トクホ)としての流通を狙っていたが、厚労省の反対で治験の必要な医薬品としての開発に追い込まれていた。これまでにサルを使った治験の結果、一定の効果が確認されたとの発表されてはいるが、ヒトに対しての効果や副作用については明らかにしていない。
農研機構では毎年、このGM花粉症緩和米をつくば市内の同機構の隔離圃場で栽培している。過去に日本製紙が、同社小松島工場内の閉鎖温室で生産していると発表していた。
この遺伝子組み換え米は「商業化」されたとしても、普通に田んぼで栽培できる代物ではなく、交雑の可能性から閉鎖温室のような施設での栽培しか見込めない以上、日本の農業を活性化するものではないことははっきりしている。2004年、神奈川県平塚市の全農試験場で計画された屋外試験栽培計画は、交雑を懸念する農家や消費者の反対で頓挫している。
そして、すでにスギ花粉症の減感作療法(アレルゲン免疫療法)薬が実用化され、舌下液の販売が始まっている中で、どこまで「需要」が見込めるのだろうか。
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