

英国はEUが進めようとしているネオニコチノイド農薬の包括的な禁止に賛成すると、11月9日付けのガーディアン紙(英国)が報じた。英国のマイケル・ゴーヴ環境・食料・農村地域(DEFRA)相が語ったもので、ネオニコ系農薬によるミツバチなどへの悪影響を明らかにした最近の研究結果を考慮したものだという。英国は、EUにおけるイミダクロプリドなどのネオニコ系農薬の禁止について、12月にも予想されるEU委員会の投票で賛成票を投ずるという。
EU委員会に投票においては、賛成国の人口が65%異常ないと可決できないが、英国は12.79%を占め、EUのネオニコチノイド農薬禁止により近づいたといえそうだ。
英国のネオニコチノイド農薬の包括的禁止方針の「包括的」の中身は、EUが禁止しようとしているイミダクロプリド、チアメトキサム、クロチアニジンの3種類だけに留まるのか、それともネオニコ系農薬全てなのかははっきりしていない。
マイケル・ゴーヴ環境相は、「1千億ポンドある英国の食品産業のキーパーツであるミツバチなどのポリネーターにもたらすネオニコチノイド農薬のリスクを明らかであり、ネオニコチノイド農薬とミツバチなどとの関係に関するこの間の研究結果は、農薬を規制すべきであり、規制を正当化する」「ポリネーターを危険にさらすことは出来ない」としている。
これらの研究は英国政府農薬専門家委員会で調査されている。「屋外環境でのネオニコチノイド農薬への曝露は、ミツバチの健康に受け入れがたい影響を及ぼしうる」と結論したという。DEFRAの主任科学アドバイザーのイアン・ボイド教授は「重要な問題は、ネオニコチノイドの使用が、ミツバチと他のポリネーターの個体数に対する悪影響を及ぼすかどうかということだ。利用しうるエビデンスは、ネオニコチノイドの使用を制限する理由となる」と語ったとしている。
・Guardian, 2017-11-9 ・DEFRA, 2017-11-9 (※追記)こうした英国政府の「方針転換」に、英国の環境保護団体バグライフは9日、「英国の方針変更を温かく歓迎する。EU離脱は、生態系の健全性について、英国に今以上の権限を与えるが、世界的に最高の基準を適用することは不可欠だ」とする見解を発表した。
・Buglife, 2017-11-9フランスは昨年7月、種子処理された種子の使用を含めて、2018年9月よりネオニコ系農薬の全面的使用禁止を可決した。例外的には2020年7月1日まで使用が認められるが、それ以降は全面的に禁止されるという。
今回のゴーヴ環境・食料・農村地域相の発言により、英国を含めてEU域内のネオニコチノイド農薬への流れはほぼ確実になったのではないか。英国ではEU離脱を決めた直後から、離脱後の英国の環境政策の後退を懸念する声が出ていた。
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