

EU委員会は11月27日、除草剤グリホサートのについて5年の登録延長を決定した。27日の加盟国担当相による異議申し立て委員会(Appeal Committee)での投票では、これまで棄権してきたドイツが賛成に回り、18カ国の賛成と、特定多数に必要な人口ライン65%をわずかに超える65.75%という僅差で可決した。登録延長の伴い、グリホサートは農業用途に限定される模様。
EUにおけるグリホサートの登録は、昨年6月に暫定的に18か月延長され、欧州化学機関(ECHA)が評価報告書を6月に提出したことから、今年12月15日に期限が切れることになっていた。EU委員会は、6度にわたり登録延長に加盟国の特定多数の賛成を得られず、デッドロックに乗り上げていた。 ドイツの「変心」は、環境相の反対にもかかわらず農業相が賛成票を投じたことによるもの。ドイツは先ごろの総選挙で連立交渉が難航している中、社会民主党の環境相とキリスト教社会同盟の農業相の対立が解消されないまま投票の持ち込まれた。
27日の決定により、欧州におけるグリホサートの登録延長問題は“幕引き”となりそうだ。しかしEU委員会は、100万人以上が署名したグリホサート禁止などを求める法的拘束力のある市民発議について、1月8日までに何らかの対応を明確にする必要があり、最終的に決着がついたとはいえない。
このEUの決定に対して、グリホサートの登録延長に反対してきたグリーンピースなどは、決定非難の声明を明らかにした。
グリーンピース欧州は27日、「危険な農薬から私たちを守るべき人びとは、欧州市民の信頼を裏切った。EU委員会と多くの加盟国政府は、独立した科学者の警告、欧州議会の要求、グリホサートの禁止を求める100万人以上の人々が署名した市民発議の無視を選んだ」と決定を非難する声明を発表した。
地球の友も27日の声明で、「グリホサートを完全に禁止して、欧州の食物と農業をより安全で、より持続可能にする機会を逃した。さらなる5年の延長は、私たちの健康と環境を危険にさらし、より持続可能な農業に大きな打撃を与える」と決定を非難した。
欧州議会でグリホサート延長反対を主張してきた議会内会派の欧州緑グループ・欧州自由連盟(Greens/EFA)は27日の声明で、「消費者と農民と環境にとって暗黒の日」であり「さらに5年間、欧州を有毒な農業に固定化する」と非難した。また、現在のEUの承認プロセスが不適切であり、より透明であるべきだと指摘し、承認プロセスにおける(グリホサートのリスク評価を行なった)欧州食品安全機関(EFSA)とドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)の役割に大きな疑問があると指摘した。
・Reuters, 2017-11-27 ・Guardian, 2017-11-27 ・Greens/EFA(欧州緑グループ・欧州自由連盟), 2017-11-27 ・Greenpeace, 2017-11-27 ・FoE Europe, 2017-11-27 ・GM Watch, 2017-11-27 ・European Commission > Pesticidesフランスは3年で禁止へ マクロン大統領がツイート
EUの5年延長決定に対してフランスのマクロン大統領は27日、代替案が見つかり次第、遅くとも3年以内の禁止を検討するよう政府に求めた、とツイッターに投稿した。ロイターによれば、ニコラ・ユロ環境相は「5年は余りに長い。3年は合理的だ」とラジオで語ったという。
フランスは先ごろ、2022年までの段階的禁止の方針と報じられていたが、さらに短縮する方針を示した。
・Twitter 2017-11-28 ・Reuters, 2017-11-27こうした欧州でのグリホサート禁止への動きとは対照的に日本では目だった動きはない。日本では101種類のグリホサートを含む農薬が登録されている。また、近くグリホサートの残留基準値の緩和が実施されようとしてる。
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