フランス・ニース地方行政裁判所は11月24日、スルホキサフロルを含む2つの農薬を一時禁止とする予備判決を下した。フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)は今年9月、ダウ・アグロサイエンスのスルホキサフロルを含むクローザーとトランスフォームの2つの殺虫剤を承認したが、環境団体のジェネレーション・フューチャーが差し止めを求める行政訴訟を10月に起こしていた。
24日の決定は、さらに詳細な主張を聞く間、一時的に承認を差し止めるというもの。原告のジェネレーション・フューチャーは、ミツバチなど蜂にとって勝利だとして歓迎の声明を発表し、ネオニコチノイド製品の禁止を求めた。
フランスは昨年、2018年9月から全てのネオニコチノイド系農薬の使用を禁止を決めた。しかし、フランス食品環境労働衛生安全庁は今年9月、スルホキサフロルはネオニコチノイド系ではないとして、ダウ・アグロサイエンスの2つのスルホキサフロル製剤を承認していた。EUは2015年、スルホキサフロルを承認している。
この承認に対してジェネレーション・フューチャーは10月27日、これら2つの製品の蜂などに対する安全性は確立されていないとして、承認差し止めを求めて行政裁判所に提訴していた。
ダウ・アグロサイエンスは、この決定を「驚くべきもので、ネオニコチノイドと同じ区分に入れたことによるもの」とコメントし、上訴する予定だという。
フランスの行政裁判所は、司法とは独立した行政上の問題を扱う行政機関で、地方行政裁判所、行政控訴院、コンセイユ・デタ(争訟部)からなる。今回の決定は、一審に相当する地方行政裁判所によるもの。
・Generations Futures, 2017-11-24 ・Reuters, 2017-11-24 ・Generations Futures, 2017-10-27 ・Dow AgroScience世界農薬工業連盟・殺虫剤抵抗性管理委員会(IRAC:Insecticide Resistance Action Committee)の分類によれば、スルホキサフロルはニコチン性アセチルコリン受容体に作用する殺虫剤に分類されているものの、サブグループがネオニコチノイド系(4A)ではなくスルホキシミン系(4C)に分類されている。
主要グループと 1次作用部位 |
サブグループ あるいは 代表的有効成分 |
有効成分 |
---|---|---|
4 ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)競合的モジュレーター 神経作用 |
4A ネオニコチノイド系 |
アセタミプリド |
クロチアニジン | ||
ジノテフラン | ||
イミダクロプリド | ||
ニテンピラム | ||
チアクロプリド | ||
チアメトキサム | ||
4C スルホキシミン系 |
スルホキサフロル |
|
4D ブテノライド系 |
フルピラジフロン |
日本ではスルホキサフロルが承認間近となっている。日本の農薬登録制度で必要とされる、環境省による水産動植物への登録保留基準が11月20日に告示された。近く、もう一つの厚労省による食品の残留基準値の告示を待つだけになっている。
・環境省, 2017-11-20(参考)
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