米国の全米有機認証基準委員会(National Organic Standards Board)は昨年11月の定例会議において、ゲノム編集技術などの新育種技術による遺伝子操作由来の成分について、従来の遺伝子組み換えと同じように、有機食品としては認めないとする勧告を満場一致で決議した。
英国の有機農業団体のソイル協会は2月21日、英国の有機市場レポート(2017年版)を発表した。2016年の有機市場の売上高は約21億ポンド(約3000億円)で、7.1%の成長だったという。英国の食品・飲料市場の1.5%を占めているという。世界の有機市場規模が約810億ドルと推定され、英国のシェアは約4%だと見積もっている。ソイル協会の認定生産者の約半数が輸出しているとしている。
大豆とトウモロコシは、その9割以上が遺伝子組み換え品種が占めている米国では、NON−GM(非遺伝子組み換え)や有機食品の需要が大きくなり、輸入が増えているという。米国の有機食品の売上高は、この10年で年々10%の成長が続き、食品セクターの5%を占めるまでに大きくなった。アメリカの消費者の68%が有機食品を購入し、44%がNON−GM製品を購入したという。こうした需要の高まりに、米国内で生産されるNON−GMや有機農産物、特に大豆とトウモロコシの不足が顕著だという。
アクト・ビヨンド・トラストが公開
アクト・ビヨンド・トラストは、日本の農薬登録制度を専門家が徹底解説した初のレポート『日本の農薬登録制度:その仕組みと背景、問題点』を公開した。科学者ネットワーク「ネオニコチノイド研究会」の専門家の手になるもので、一般に流布されている「厳しい日本の農薬規制」がいかなるものか、その農薬登録制度を批判的に解説したもので、110ページのレポート(PDF版)が無料で公開されている。
4団体が要望書を提出
承認手続きが再開された新しいネオニコチノイド系農薬のスルホキサフロルの承認に反対する反農薬東京グループなど4団体は2月15日、承認しないよう求める要望書を、農水大臣と環境大臣に提出した。
厚労省は、新しいネオニコチノイド系農薬のスルホキサフロルの承認に向けて、近く意見公募(パブリックコメント)を始める予定だという。スルホキサフロルの承認作業は昨年3月、米国での登録取消しを受けて保留されていた。
米国では、野生のミツバチなどへの影響を調べないまま農薬登録したことが連邦法に違反するとして、連邦地裁が登録無効の判決を下した。この判決で15年11月、一旦登録が取り消されたが、16年10月、条件を厳しくして再登録された。この米国の再登録を受けて、厚労省は承認作業を再開した。
市民は強い反GM意識 横行する違法栽培
中国の穀物収穫量の10%を生産する黒龍江省は今年5月以降、米やトウモロコシ、大豆などの遺伝子組み換え作物の栽培を全面的に禁止する、罰則付きの食品安全条例が施行される。これにより同省全域(約1180万ヘクタール)がGMOフリーゾーンとなる。黒龍江省政府は昨年、省内での遺伝子組み換え作物栽培禁止の方針を打ち出していた。背景には、黒龍江省市民の大多数が、同省内での遺伝子組み換え作物の栽培に反対という状況がある。
EU委員会の発表によれば、EU域内の有機農業は有機需要の高まりに伴い、圃場面積、登録農家数ともに大きく増えているという。EU28か国の認証有機圃場は、2015年には1100万ヘクタールに達し、2010年からの5年間で約200万ヘクタール、約21%増えた。有機圃場面積はEU域内の圃場の約6%を占める。また有機農家は、前年比5.5%増の27万人余りとなったという。15年度末、日本の認証有機圃場は約1万ヘクタールで、圃場全体の約0.2%ほどにすぎない。EUの有機農業の大きさは、日本の約1千倍。欧州の有機農業の大きさがよく分かる。
英国ロザムステッド研究所は2月1日、光合成機能を強化して収量を40%増やすという遺伝子組み換え小麦の屋外試験栽培の承認を得たと発表した。温室での試験結果を確認するという。この遺伝子組み換え小麦の開発は、将来の世界的な人口増加を見据えたものだとしている。しかし、こうした遺伝子組み換え技術を使うまでもなく、これまでの品種改良で可能だと指摘されている。ロザムステッド研究所はこれまでに、近隣の農家の反対を押し切り、アブラムシ耐性遺伝子組み換え小麦の屋外試験栽培を行っている。
農水省は2月2日、輸入時の栽培用種子に対する未承認遺伝子組み換え品種の混入検査で、パパイヤとワタで未承認遺伝子組み換え種子の混入が見つかったと公表した。この2つの他にカリフラワー、小麦、大豆、ピーマンについては検出されなかったとしている。
米国化学業界が国際がん研究機関「改革」キャンペーン
米国で今、「クロをシロと言いくるめる」ようなことが起きている。米国化学工業協会(ACC)は1月25日、国際がん研究機関(IARC)が透明性と信頼性に欠けるとして、改革を求めるキャンペーンを開始したと発表した。米国化学工業協会は、国際がん研究機関の化学物質のリスク評価が、市民の混乱と誤った政策決定をもたらしていると断じている。米国化学工業協会の会員企業には、モンサントやデュポン、ダウなどの名だたる農薬メーカーが名を連ねている。日本企業では住友化学、三菱化学、三井物産などが会員となっている。
米国のような「落花後」規制は盛り込まれず
厚労省は2月1日に開催された薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会で、ネオニコチノイド系農薬のスルホキサフロルの承認手続きを再開し、残留規制値(案)公表された。昨年3月、米国の登録取消しを受けて、突如ストップした承認手続きが再開されたことで、近く案通りに承認されそうだ。欧米と異なり、ネオニコ系農薬の規制には注意書きで十分と、規制に後ろ向きの姿勢もはっきり出てきた。
米国の研究チームはこのほど、ファストフードの包み紙や紙製の容器でフッ素化合物(PFAS:パーフルオロアルキル化合物)が見つかったとする研究結果を発表した。PFASについてはよく分かっていないが、過去には発がん性が疑われていたとしている。論文は全文が公開されている。
ラットの長期試験で判明
ロンドン大学などの研究チームは1月9日、グリホサートを主成分とするラウンドアップを長期にわたり超低濃度で与えたラットに非アルコール性脂肪肝を引き起こすとする研究結果を、サイエンティフィック・リポーツ(電子版)に発表した。研究によれば、4ng/Kg体重に相当する50ng/Lのラウンドアップを含む水を約2年間にわたって与えた結果、脂肪肝を生じ、対照群と比べ有意だったという。また一つ、ラウンドアップ(グリホサート)の問題が明らかになった。
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