米国メイン州ポートランド市議会は1月3日、一部のゴルフ場を除き住民と市による合成農薬の使用を包括的に禁止する罰則付きの条例を全会一致で可決した。これにより、除草剤のラウンドアップ(グリホサート)やネオニコチノイド系殺虫剤の使用が原則禁止されることになる。この条例は2年余りの市民の運動の成果。条例案は前書きで、農薬が人の健康に脅威となるばかりか生態系への脅威ともなると指摘している。
昨年11月の条例案では、18年3月から順次3段階で施行されるとなっていたが、第1段階として18年7月から市の施設や公有地での使用禁止に修正された。第2段階として19年1月より競技場を除く民間・民有地での使用が禁止され、最終的には2021年1月から競技場での使用が禁止される。しかし、ゴルフ場での使用禁止は除外されている。
2015年8月、農薬禁止を求める市民団体ポートランド・プロテクターは1300余りの署名を添えて、市議会に農薬禁止の条例制定の請願を行なっていた。可決を受けてポートランド・プロテクターは、「やった! ポートランド・オーガニック条例は、午後11時11分に全会一致で可決」とフェースブックに書き込んだ。
ポートランド・プロテクターの共同設立者であるエイブリー・カミラさんは、「市議会は、住民、有機専門家、独立科学に耳を傾け、公衆衛生と環境管理の優先順位付けを決めた」「有力なオーガニック都市としての新しい位置が、若者や訪問者にとってポートランドをさらに魅力的なものにすると期待している」と語ったという(Beyond Pesticide)。
自治体レベルとはいえ草の根からの運動が、農薬の包括的禁止を勝ち取った。民主主義がまだ健在だ。米国では、連邦レベルでは一部ネオニコ系農薬の新規登録停止に留まっている。しかしミツバチの大量死との関連から、ネオニコ系農薬の販売や農家以外の使用禁止が、メリーランド州やシアトル市などで実施されている。オレゴン州ポートランド市議会は2015年4月、環境保護団体の要請を受け市有地でのネオニコ系農薬の使用禁止条例を可決している。
(参考)【関連記事】
- ネオニコ系国内出荷量 21年度3.8%増 第二世代は63%増
- 有機農業は排外主義に与しない 参政党に反対する農民と市民が声明
- 冊子『スルホキサフロル 新しいネオニコチノイド系農薬』刊行のお知らせ
- ネオニコ系イミダクロプリド 自閉スペクトラム症様の視知覚障害を引き起こす
- 厚労省:グリホサートの残留基準値を大幅緩和を告示
- メキシコ GMトウモロコシ栽培を禁止 24年までに輸入も段階的に禁止
- 東アジアは農薬のホットスポット 日本はトップ5
- 農薬再評価 ネオニコとグリホサートなど優先14品目を告示
- 米国産ジャガイモ 輸入規制緩和 ポストハーベストも認める
- 輸入小麦の残留グリホサート 豪州産の検出率急増