米国食品医薬品局(FDA)は1月9日、中国・華中農業大学(湖北省武漢市)が開発し申請した害虫抵抗性の遺伝子組み換えイネ「華恢1号」を承認した。米国環境保護庁(EPA)の承認も得たという。この遺伝子組み換えイネは、2006年以来たびたび見つかって問題となっている、日本では未承認のBt63と同じもののようだ。
FDAは、華中農業大学のチェン氏に宛てた書簡で、「(華恢1号の)構成、安全性と他の関連したパラメータが、現在市場に出ている米を原料とする食品や飼料と実質的に異なるとは考えていないと理解している。遺伝子組み換えの華恢1号は、FDAによる市販前審査または承認を必要とする問題を提起していない」と述べ、食品や飼料として問題がないとしている。
公開されたFDAの書簡では、この華恢1号は、ニカメイガやコブノメイガなどの鱗翅目(チョウ目)害虫に対する殺虫性毒素を作り出す細菌(バチルス・チューリンゲンシス)由来の遺伝子Cry1AbとCry1Acを組み込んだものとしている。
環球時報(英語版)によれば、中国政府は2009年、この遺伝子組み換えイネ華恢1号についてバイオセーフティ証明を出したものの商業栽培を許可しなかった。中国では2009年の試験栽培に関する承認を最後に、遺伝子組み換えイネの商業栽培に関する承認はないという。この米国FDAの承認によって、すぐに遺伝子組み換え米の流通につながるということではないだろう。
しかし、このFDAの承認は、「安全評価、栄養評価の実験方法及びデータが、米国関連機関から完全に承認されたことを意味する」(人民網)として中国に自信を与えていることは確かだろう。
この数年、遺伝子組み換え食品に慎重だった中国政府は、徐々に解禁の方向に舵を切っているように見える。中国政府は2016年8月、「新しい害虫抵抗性の綿とトウモロコシ、除草剤耐性の大豆の商業栽培の推進」を公表している。一方で中国の消費者は、遺伝子組み換え食品への忌避感が強いとも報じられている。中国黒竜江省は2017年2月、9割の市民の反対を受けて、省全域での遺伝子組み換え作物栽培を禁止するGMOフリーゾーンを決めている。
商業栽培の承認がないとしても、中国国内では研究機関から流出した遺伝子組み換え米が違法に栽培されていることも確かなことであり、輸入の米加工品から検出される可能性がなくなったわけではない。
・FDA, 2018-1-9 ・人民網日本語版, 2018-1-22 ・Global Times, 2018-1-22 ・Reuters, 2018-1-23(参考)
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