最終更新日:2018年2月26日
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2018.02.26 No.890
■ネオニコ系農薬の代替はIPMが有効 新たな研究
rape_Bumble_Bee.jpg / Flickr
ナタネとマルハナバチ / Dean Morley / Flickr

 国際自然保護連合(IUCN)の諮問部会の浸透性殺虫剤タスクフォースは2月25日、有害なネオニコチノイド系農薬の実行可能な代替策について、総合的病害虫管理(IPM)の原則と手法を用いることが、経済的にも効果的であるとする新たな研究論文を専門誌に発表した。この論文は、浸透性殺虫剤タスクフォースが昨年発表した『浸透性殺虫剤の生物多様性と生態系への影響に関する世界的な統合評価書』第2版(WIA2)の第3章に当たる。

 論文は、ネオニコチノイド系殺虫剤と、それに対する実行可能な代替策と有効性を比較検討した200編以上の論文を分析し、「害虫と戦うにはごく少量の農薬で足り、 残りは環境を汚染する」としている。水溶性のネオニコチノイド系殺虫剤は土壌残留性が高く、土壌微生物や水生生物にとって有害であるとしている。

 ● 論文のポイント
  • ネオニコチノイド系殺虫剤で処理した種子を使っても、ほとんどの場合、収穫量の増加をもたらさない
  • 低コストで害虫の発生リスクを早期に検知するための、信頼性の高い複数の方法が存在する
  • 農業生産者を経済的リスクから守りつつ、効果的な害虫防除を達成する有効な戦略が利用可能である。たとえば、農家を不作から守るために設計された革新的な保険制度としての「共済」モデルがその一つ
  • IPMを用いるか保険でカバーするかを問わず、すべての代替シナリオが、ネオニコチノイド系殺虫剤で処理した種子を使うより安上がりである

 ・Environmental Science and Pollution Research, 2018-2-25

 タスクフォースは、IPMとともに、イタリアのトウモロコシ栽培における害虫被害のリスク分析と被害をカバーする保険システムに着目している。リスク分析により、ほとんど殺虫剤を使うことなく、より少ない費用で効果が上がるとしている。

 イタリアの29年にわたるハリガネムシ被害に関する大規模な研究は、被害リスクの要因を特定し、ネオニコ系殺虫剤を予防的に使わなくとも被害のない農地をはっきりさせることが分かったという。これによりイタリア北東部のトウモロコシ畑の96%では、殺虫剤の使用が不要となったという。害虫被害のリスクのある地域では、大規模に試験運用された「共済型」保険モデルが費用対効果に優れた方法であるとしている。

 タスクフォースが2014年に発表した第1版は、ネオニコチノイド研究会による日本語翻訳版が『浸透性殺虫剤の生物多様性と生態系への影響に関する世界的な統合評価書』として公開されている。また、昨年秋に発表された第2版の第1章と第2章も全文(英文)が公開されている。

 ・ネオニコチノイド研究会, 2015-4
 ・The Task Force on Systemic Pesticides, 2015-1-9
 ・Environmental Science and Pollution Research, 2017-11-5
 ・Environmental Science and Pollution Research, 2017-11-9

 今回発表された論文ではネオニコ系殺虫剤で種子処理したとしても、ほとんど収量増加はないとしている。この経済性について米国環境保護庁は2015年、ほとんど効果がないとする研究結果を公表している。

 ・EPA, 2014-10-16
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