米国では有機食品への需要が高くなっているが、米国食品大手のゼネラル・ミルズは3月6日、サウスダコタ州で約1万4千ヘクタールの慣行農地を有機転換し、生産した有機小麦などの有機農産物をゼネラル・ミルズの自社製品で使用するという戦略的調達協定をガンスモーク農場と結んだと発表した。背景には、年々約10%成長を続けている米国の有機食品への需要がある。2016年には430億ドル(約4兆7千億円)にまで成長しているという。
ゼネラル・ミルズは、「このような大規模な転換への投資はゼネラルミルズにとっては初めてのことであり、有機サプライチェーンを拡大するためのステップの一つだ」としている。「土地所有者とパートナーシップを結び、消費者が望む食材にオーガニックの原料をより使いやすくする方法を模索している」としている。
この協定では、有機転換農地の土壌改善とともに、マルハナバチやミツバチ、チョウなどのポリネーターの生息地として1200ヘクタールを確保するという。こうした生息地は、水質を改善し土壌浸食を減らし、鳥の保護にも有用だという。この生息エリアについては、すでにパートーなーシップを結んでいる環境NGOのゼルシーズ・ソサエティと協力するという。
・General Mills, 2018-3-6日本では、イオンがワタミのような企業が直営農場で有機認証を取得している例はある。しかしゼネラル・ミルズのように1万ヘクタールを超えるほどの大きな規模ではない。そもそも農水省のまとめでは、日本の有機認証圃場は約1万ヘクタールであり、認証を受けていない有機圃場と合わせても2万3千ヘクタールだという。農家数も認証農家4千戸、認証を受けていない有機農家が8千戸で、合わせても日本の農家253万戸の0.5%だという。
日本の現状は、オーガニックがブームだといっても、そこまでの需要がないということだ。スーパーなどの売り場を見ても、有機農産物はほとんど見当たらない。日本の有機需要が目に見えて増えないことの一つには、世界でも農薬を多用しているにもかかわらず、「国産農産物は安全」という「神話」が根深いことにあるのかもしれない。あるいは、実質賃金が下がる一方でエンゲル係数が上がり、少しでも安い食材を求め、有機食品にまで手が届かないということもあるのかもしれない。
・Organic Trade Association, 2017-5-24 ・農水省, 2018-3【関連記事】
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