EU委員会は3月21日、バイエルによるモンサント買収について一部事業の売却などの条件を付けて承認すると発表した。13日には中国が、野菜種子事業の売却を条件に承認していた。欧州では多くの農民や市民がこの買収に反対している。前日の20日には欧州のNGOが連名で買収を承認しないように求める公開書簡を競争政策担当ヴェステア委員に送っていた。欧州議会内会派の欧州緑グループ・欧州自由連盟や、買収に反対してきたNGOが失望と非難の声明を出している。多くの農民や市民の反対にもかかわらず、「バイサント」が現実味を帯びてきた。
EU委員会は、バイエルの種子事業と除草剤事業の一部売却、デジタル農業分野でのライセンスの提供、モンサントの線虫駆除農薬事業の売却を承認の条件としたとしている。
バイエルは21日、「重要な節目」となるEU委員会の承認を得たとする声明を発表した。その中で「モンサントと共に世界中の農民が消費者と環境のためになるより持続可能な方向での生産に手を貸す」と人を食ったコメントを明らかにしている。
承認が必要な国の中で米国とロシアがまだ承認していない。しかし、バイエルは今年の4月から6月の第2四半期に買収を完了させたいとしているという。買収が完了した場合、世界の農薬と種子事業の4分の1を握る巨大企業が生まれることになる
・European Commission, 2018-3-21 ・Bayer, 2018-3-21 ・Reuters, 2018-3-21 ・Bloomberg, 2018-3-21EU委員会の買収承認にこれまで反対してきた欧州議会内会派やNGOが非難する声明を発表した。
欧州議会内会派の欧州緑グループ・欧州自由連盟(Greens/EFA)は21日、「この合併は、農民や我々の環境と食糧安全保障にとって悪いニュースだ」とする声明を発表した。その上で、「新たな農業改革は小農民に公的な権限を与えて、真に持続可能な農業へ急速な移行を支援する機会」だとコメントしている。
・Greens/EFA, 2018-3-21国際NGOの一つであるETCグループは21日、EU委員会の買収承認は15年以来の3大合併を終結させ、米国も追随するだろうとして、こうした合併は農家や世界の食糧安全保障にとって良いことではない、とEU委員会の承認を批判する声明を発表した。
・ETC Group, 2018-3-21地球の友・欧州(Friends of Earth Europe)は21日、「世界最大で最も強力なアグリビジネス会社を作り、遺伝子組み換え種子と有毒な農薬を我々の食物と農業に押し込もうとする。承認は農民にも消費者にも良くない地獄の結婚だ」と非難する声明を発表した。EU委員会の買収承認に先立つ20日、地球の友など欧州のNGO72団体は連名で、EU委員会が買収を承認しないよう求める公開書簡を、EU委員会競争政策担当ヴェステア委員に送っていた。
・FoE Europe, 2018-3-21 ・FoE, 2018-3-20地球の友・欧州は2月、バイエルのモンサント買収に関する意識調査の結果を発表している。ドイツ、フランス、スペイン、デンマークでの7千人余りを対象とした調査の結果、買収に賛成はわずか17%にすぎず、54%がEU委員会が拒否すべきだと回答しているという。おおよそ半数は、環境や農薬使用、食品の質に悪影響を与えると考えているとしている。
・FoE Europe, 2018-2-27【関連記事】
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