

環境省と文科省は3月29日、農研機構が申請した2系統4種類の遺伝子組み換え(GM)イネの隔離圃場での試験栽培について、カルタヘナ法に基づく意見公募(パブリックコメント)を始めた。どちらの遺伝子組み換えイネも動物の遺伝子を組み込んでいる。いずれも2023年3月まで、つくば市内の農研機構の隔離圃場で屋外試験栽培を行う予定としている。農研機構は今年、このほかにも3種類の遺伝子組み換えイネの隔離圃場での試験栽培計画を公表している。
今回の意見公募の1つグルテリン蓄積イネは、血圧降下機能を持つタンパク質をイネの胚乳の中に作り出すようにした遺伝子組み換えイネで、ニワトリ(セキショクヤケイ)の遺伝子と除草剤ビスピリバックナトリウム塩耐性遺伝子を組み込んでいるとしている。農研機構はこのGMイネについて、既知のアレルゲンを調査したが、類似したものはなかったとしている。意見聴取会合での意見書は、「ビスピリバックナトリウム塩に対する耐性が付与されているが、ビスピリバック塩が自然条件下に高濃度で存在することは無いため、同物質への耐性を有することが、競合において優位に働くとは考えがたい」として、「生物多様性影響が生じるおそれはない」としている。
もう一つのシンク能改変イネは、ヤツメウナギの遺伝子を組み込み、ゲノム編集により一部の遺伝子の機能を失わせたもので、収量増加を狙った遺伝子組み換えイネだとしている。農研機構は昨年、遺伝子組み換えシンク能改変イネ2系統について隔離圃場での栽培の承認を得て、つくば市内で試験栽培を実施している。今回の申請のものもシンク能改変イネとしているが系統名が異なっている。
・環境省, 2018-3-29 農研機構は今年、3種類の遺伝子組み換えイネの隔離圃場での試験栽培計画を公表している。
・スギ花粉ペプチド含有イネ
・スギ花粉ポリペプチド含有イネ
・複合病害抵抗性イネ
今回の遺伝子組み換えグルテリン蓄積イネは、花粉症緩和米と同じように、イネが本来持っていないタンパク質を作り出すよう組み換え、医薬品となる成分を作り出そうとしている。米国では2007年、Ventria Bioscience社が開発したヒトのタンパク質産生遺伝子を組み込んだ遺伝子組み換え米の商業生産を承認し、商業的な栽培が行われているという。
今回の意見公募の遺伝子組み換えイネは、「イネ」とはいうものの、ニワトリやヤツメウナギの遺伝子を組み込んだり、流行のゲノム編集で一部の機能を働かないようにしたり(ノックアウト)と、もはや本来の「イネ」とは別物の工業製品にほかならない。
Ventria Bioscience社のGMイネは、交雑懸念から全くイネを栽培していない地域を選んで栽培されているという。それでも、周辺の河川への流出の可能性があり栽培すべきではないと指摘されている。この指摘は、いたるところでイネが栽培されている日本では、普通に栽培できるところがないということでもある。そんなイネを作り、その米を食べたいという消費者がいるとは思えない。
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