

世界最大のパスタメーカーであるイタリアのバリラはこのほど、消費者のグリホサートへの懸念を考慮し、原料のカナダ産デュラム小麦の輸入を35%削減し、新たな契約をストップしている、とiPoliticsが伝えている。バリラは、残留グリホサートが0.01ppm以上の小麦は使わないという。背景には、欧州消費者のグリホサートに対する健康への影響懸念がある。国際がん研究機関(IARC)は2015年、グリホサートについて「ヒトに対する発がん性がおそらくある」とするグループ2Aに位置づけた。
カナダの小麦に対するグリホサートの残留基準値は5ppm。多くの小麦が収穫と乾燥を容易にするため収穫前に除草剤を散布しているが、デュラム小麦の多くには散布されていないという。イタリアは2016年、グリホサートについて収穫前散布の規制を強化している。
・iPolitics, 2018-4-3日本は2016年に510万トンの小麦を輸入している。カナダ産は180万トン(33%)で米国産の250万トン(46%)に次いで2位。ほかに豪州産が80万トン(16%)となっている。国産小麦は約80万トンで自給率は15%ほどに留まっている。
日本は昨年12月、グリホサートの残留基準値を緩和し、小麦は従来の5ppmから30ppmに大幅に緩くなったが、 厚労省の残留農薬に関する調査(平成27年度 食品中の残留農薬等検査結果について)では、小麦の残留グリホサートは調査されていない。
農水省は輸入の米と麦について残留農薬の検査結果を公表している。2013年以降は具体的な残留値は公表せず、検査数と検出限界未満の検査数、残留基準値超えの検査数のみである。2013年以降の残留グリホサートの検出率を見てみると、米国産とカナダ産の小麦では、検査した90%以上から、年によっては100%からグリホサートが検出されている。総じてカナダ産の方が検出率は高い。一方、豪州産とフランス産では20%以下と低い。

農水省の調査は、2012年までは検出値の範囲を明らかにしている。2012年前期分のデータの検出された残留グリホサートの上限地で見ると、米国産の1.13ppm、豪州産の0.13ppmに対して、カナダ産は4.34ppmと高い。輸入小麦の8割強には、その濃度のちがいはあるものの、そのほとんどが残留グリホサートを含んでいることになる。これらの輸入小麦の多くは、小麦粉やパン、うどん、菓子類などに加工されている(製粉振興会)。
・農水省, 2017-10 ・農水省バリラの製品の50%は輸出され日本でも普通に購入できる。残留グリホサートを避けるには、収穫前使用のない国産小麦を使ったものや、バリラのような製品を選ぶしかないのかもしれない。国際がん研究機関(IARC)の「ヒトに対する発がん性がおそらくある」とする評価もあり、世界的にグリホサートに対する健康懸念が高くなっているが、米国では民間によるグリホサート・フリー認証が始まっている。
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