NGOなどは非難
米国の農務省は5月3日、米国の消費者が求めていた遺伝子組み換え表示制度案を提示し意見公募を始めた。米農務省案では、「Genetically Modified」や「GMO」といった米国で一般的に使われてきた言葉が「Bioengineered(BE)」に置き換えられた。また、小規模食品業者が除外されたりと全面的なものとはなっていないため、表示を求めてきたNGOからは非難の声が上がっている。
米農務省案の骨子は以下の通り。- 「Bioengineered(BE)」という語に限定
- QRコードによる「表示」を認める
- 意図せざる混入率は5%か0.9%、また意図的でない場合でも5%以下であれば除外
- 遺伝子組み換え飼料の家畜由来の肉や乳製品は除外
- 小規模食品企業の義務除外
- 小さな表示スペースしかない場合の除外
- レストランなどは除外
- Bioengineered(BE)マークによる表示を認める
米農務省案は、ゲノム編集技術については具体的に触れていないようだ。混入率などについては複数の選択肢について意見を求め、最終的には今年後半に実施するとしている。
・USDA, 2018-5-3 ・USDA, Agricultural Marketing Service, 2018-5-3 ・Food Navigator, 2018-5-3この米農務省案に全面的な表示を求めてきたNGOなどは非難の声明を出している。
「Just Label It」は3日、全ての遺伝子組み換え成分が対象となっていないことやスマートフォンを持たない貧困層が取り残される点などから大いに失望したと声明を発表した。その上で、全ての成分の表示と全ての消費者が何が入っているかを知ることができるようサポーターを再結集するとした。
・Just Label It, 2018-5-3食品安全センター(Center for Food Safty)は3日、米農務省案がQRコードを認めたことについて、米国人の3分の1が高価なスマートフォンやインターネットにアクセスできない現状では低所得者、高齢者、少数民族を差別することになるとして、QRコードを認めるべきでないとする声明を出した。また、この案では、多くの遺伝子組み換え食品は表示不用になると指摘している。そして、農務省案が長く一般に使われてきた「Genetically Modified」や「GMO」という語句を認めず「Bioengineered(BE)」に置き換えたことは、消費者の混乱や誤解を招き、「消費者が暗闇に置かれることになる」と非難している。
・Center for Food Safty, 2018-5-3Food & Water Watchも3日、抜け道だらけで消費者を暗闇に置くもので「産業界への贈り物だ」と農務省案を非難する声明を出した。農務省案が消費者が知らない「Bioengineered(BE)」だけにしたことは詐欺的だと指摘し、農務省案が示した、太陽と花をアレンジした「BE」マークは、製品が自然で持続可能であるかのように消費者に思わせると非難した。
・Food & Water Watch, 2018-5-3日本では消費者庁による遺伝子組み換え表示検討会がこの3月、表示の拡大や混入率の引き下げを求めてきた消費者の期待を裏切る、ほとんど現状を踏襲する最終報告をまとめている。混入率は5%で据え置きであり、不検出でないと「遺伝子組み換えでない」と表示できないとされた。
検討会の議論の中では、米国農務省が示したようなマークによる表示は盛り込まれなかった。また、米国で大きな問題となっているスマートフォンが必要なQRコードについて、消費者庁食品表示企画課・赤ア課長は2月1日に開かれた「消費者による消費者のための遺伝子組み換え表示検討会」の席上、日本の現状では採用できないと断言している。
しかし、日本の表示制度は、米国同様にレストランなどでの表示が除外されたり、食用油などの遺伝子組み換え原料を使った製品が除外されたりしている。国際的にも見劣りのする不十分なもので、大幅な改善が必要な表示制度だ。
・消費者庁, 2018-3-28【関連記事】
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