EUが屋外使用禁止を決めた3種類のネオニコチノイド計農薬のうちクロチアニジン(商品名ダントツ)を生産する住友化学は5月11日、ようやくEUの決定は「非科学的」であり、クロチアニジンは使用法を守れば「安全」とする見解を発表した。
住友化学は、欧州食品安全機関(EFSA)が2月に公表したハチ類への影響評価について、「加盟国の過半数が反対」しているにもかかわらず、それを根拠とした採択がなされたことは、非科学的で一貫性を欠いた対応であると言わざるを得ないと批判している。その上で、「製品ラベルに従ったクロチアニジンの適正な使用がハチの健康に対して安全であることを覆すものではなく、クロチアニジンがミツバチの大量死、大量失踪の主たる原因ではないとする住友化学の見解に何ら影響を与えるものでもありません」としている。
・住友化学, 2018-5-11住友化学のこの見解は、予防原則を否定し、ミツバチのみならず環境へのリスクがあるとする、これまでに積み上げられてきた知見は間違っているとするものであり、住友化学こそ「非科学的」といわざるを得ないだろう。
住友化学が批判している欧州食品安全機関の再評価結果は、1500余りの論文を精査し、環境を汚染している推定値はミツバチにとって安全と考えられるレベルより高く、高リスクであると結論している。こうした再評価を受けて、4月27日のEU委員会では、16か国(人口比76%)が禁止に賛成した。反対はデンマークなど4か国に過ぎない。
住友化学のクロチアニジン(商品名ダントツ)の2016年の国内出荷量は78.2トンと、ネオニコチノイド系農薬中ではジノテフランに次いで第2位の出荷量(国立環境研究所のまとめ)となっている。
EUが屋外使用禁止を決めた残りの2種類を生産するバイエルとシンジェンタも、EUの決定を非難する声明を発表している。
屋外使用の禁止が決まった一つ、イミダクロプリド(商品名アドマイヤー)の開発・製造元のバイエル・クロップサイエンスは、4月27日にすぐさま失望の声明を発表している。声明は「この決定は、その多くは代替策が存在しない重大な害虫に立ち向かうヨーロッパの農家の能力を低下させる。バイエルは、ネオニコチノイドはラベルの指示に従って使用すれば安全であり、この制限は不要だと確信している」としている。
・Bayer cropscience, 2018-4-27もう一つのチアメトキサムの製造・開発元のシンジェンタは、バイエルと同様に4月27日すぐさま決定を非難する声明を発表している。「加盟国によるネオニコチノイドのさらなる規制のための委員会の提案を支持する今日の決定は、期待外れではあるが、予期しないことではない。シンジェンタは、今日の決定がヨーロッパの農家や環境にとって正しい結果であるとは考えてはいない」としている。
・Syngenta, 2018-4-27【関連記事】
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