カナダ食品食品検査庁(CFIA)は6月14日、カナダ・アルバータ州の道路わきでモンサントの除草剤耐性遺伝子組み換え(GM)小麦(MON71200)が見つかったと発表した。この遺伝子組み換え小麦は未承認品種で、今年1月に見つかり、4月8日にモンサントのGM小麦と同定したとしている。しかし、自生の原因は不明だとしている。日経などによれば、この発表を受けて農水省は15日、安全が確認されるまでカナダ産小麦の輸入と在庫分の売り渡しを一時停止したという。これまでにも米国で3回、モンサントの試験栽培のGM小麦の自生が見つかったが、当局はいずれのその原因を特定できていない。
モンサントは1998年から、除草剤ラウンドアップ耐性の遺伝子組み換え小麦の試験栽培をカナダで実施していたが、カナダの小麦生産者や世界的な消費者の反対に2004年、商業栽培を断念し試験栽培も中止している。
カナダ食品食品検査庁の発表によれば、この自生の遺伝子組み換え小麦は以前の試験栽培地から300キロ離れており、周辺からは同様の遺伝子組み換え小麦は見つからなかったしている。同庁は今後、この遺伝子組み換え小麦の自生が見つかった周辺を3年にわたって監視するとしている。カナダの報道では、道路わきに除草剤を散布したあとに枯れずに残っていた小麦に、作業員が気が付いたことから発覚したという。
カナダ食品食品検査庁は、このGM小麦のDNAをカナダで流通している小麦種子と照合したが存在せず、種子の汚染はないともしている。同庁はまた、これまでカナダで試験栽培を行ってきたBASFのGM小麦の可能性もないとしている。
・Canadian Food Inspection Agency, 2018-6-14 ・日経, 2018-6-15 ・Reuters, 2018-6-15 ・Globe and Mail, 2018-6-15カナダ農民組合(National Farmers Union)は6月15日、この遺伝子組み換え小麦の自生に関する声明を発表し、カナダ食品食品検査庁の屋外試験栽培に対する規制が不十分だったと指摘した。モンサントがグリホサート(ラウンドアップ)耐性遺伝子組み換え小麦の屋外試験栽培を行っていた1990年代終わりから2000年代初頭にかけて、企業は詳細な情報を規制当局に提出する義務はなかったという。カナダ食品食品検査庁は、試験栽培の残渣処理の手順が適切であるとして試験栽培を進めたが、結局、14年たって自生するGM小麦が見つかった。しかし、当局は自生の原因を特定できないと、カナダ農民組合は規制の不十分性を指摘している。
カナダ農民組合・種苗委員会のベーム委員長は、「規制当局は依然として博打を続けている。今回は散布したグリホサートに枯れなかったことと、判断力のある作業員によって見つかった。今後、より深刻な事態を未然に防止するには、遺伝子組み換え小麦の野外試験栽培を中止する時だ」と述べている。
・National Farmers Union, 2018-6-15遺伝子組み換え作物・食品に反対してきたカナダ・バイオテクノロジー行動ネットワークは6月15日、今回の遺伝子組み換え小麦自生について「孤立した汚染ということで安堵しているが、政府が原因を特定できないことを懸念している。汚染は再び起こりうる」とするルーシー・シャラットさんのコメント発表した。
カナダでは遺伝子組み換え作物の試験栽培圃場の詳細情報は明らかにされてないという。こうした状況にシャラットさんは、「GM作物の屋外での試験栽培の前に農民に意見を聞くべきである。GM作物の試験栽培の経済的なリスクが高すぎるかどうか判断する必要がある。不正な組み換えからパンをまもる必要がある」と指摘している。
・Canadian Biotechnology Action Network, 2018-6-15米国やカナダを含めて世界的に、承認された遺伝子組み換え小麦の商業栽培はまだない。しかし、これまでにも屋外試験栽培から漏れて出たと思われる遺伝子組み換え小麦の自生が見つかっている。米国では2013年、15年、16年とモンサントのグリホサート耐性遺伝子組み換え小麦の自生が見つかっている。しかし米国農務省は、そのいずれの原因も特定できないまま調査を終えている。
2016年には韓国で、アルゼンチン産の飼料用小麦からオレゴン州で自生が見つかったGM小麦と同じ除草剤ラウンドアップ耐性GM小麦MON7180が見つかり、廃棄・積戻しが指示されている。
日本の小麦自給率は低く、10数%にとどまっている。2017年、米国、カナダ、オーストラリアから533万トンを輸入している。カナダからは150万トン(全輸入量の28%)を輸入している。
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