7月20日の「土用の丑」に向けてスーパーのチラシにはウナギが並んでいる。ネット通販大手のアマゾンやヨドバシカメラまでもが販売している。そんなウナギは、ジャイアントパンダより絶滅が危惧されている程に生息数が激減しているという。
環境省は2013年、ニホンウナギを「近い将来における野生での絶滅の危険性が高い」絶滅危惧IB種に指定してレッドリストに登載した。環境省は、天然のニホンウナギの漁獲量データを基にした3世代(12〜45年)の減少率は72〜92%と推定し、生息数が急激に減少したとしている。完全養殖の出来ないウナギは、稚魚のシラスウナギを採ってきて、養鰻場で大きくしているだけで、天然のシラスウナギが採れなければ供給量も減少する。農水省のまとめでも、輸入を含むウナギの供給量は、2000年の約16万トンをピークに、2016年に5万トンと3割にまで急激に落ち込んでいる。
・環境省, 2013-2-1 ・農水省2018-6 ・環境省, 2017-3-31各国政府や政府機関、NGOなどで構成される国際自然保護連合(IUCN)も絶滅が危惧される種を7つのランクに分けて指定している。そこでは、ニホンウナギを含むウナギ類3種が絶滅危惧に、日本でも販売されているウナギの一つビカーラウナギが準絶滅危惧とされている。国際的にも、ニホンウナギの将来が懸念されている。
区 分 | 内 容 | 種 |
---|---|---|
CR Critically Endangered |
絶滅危惧IA類 ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高い種 |
・ヨーロッパウナギ |
EN Endangered |
絶滅危惧IB類 IA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高い種 |
・ニホンウナギ ・アメリカウナギ ・トキ ・タンチョウヅル |
VU Vulnerable |
絶滅危惧II類 絶滅の危険が増大している種 |
・ジャイアントパンダ |
NT Near Threatened |
準絶滅危惧 存続基盤が脆弱な種 |
・ビカーラウナギ |
売れずに廃棄 シラスウナギは密輸や密漁で採補
グリーンピースは今年6月、ウナギに関する大手小売16社への調査レポートを公表した。その中で、2017年に販売できずに処分した商品がなかったと回答したのは2社(パルシステム、ヤオコー)で、少なくともイオンなど10社が廃棄処分したとしている。処分した量を回答した5社だけでも2.7トン(1尾200グラムとして約1万3千尾)が廃棄されたという。
グリーンピースの公開したファクトシートで、海部健三氏(中央大学法学部准教授)は、日本で流通しているウナギの7割が「(シラスウナギの)密輸、密漁、無報告漁獲など違法行為を経ている」と考えられると指摘している。国内養殖でも、国外養殖の輸入ウナギでも、高い確率で違法行為由来のウナギが混在していることになり、100%適法である養殖ウナギの入手は「ほぼ不可能」だという。大手小売16社の回答でも、ほとんどが違法由来の可能性を否定していない。
・グリーンピース, 2018-6-4国際自然保護連合のレッドリストには、ニホンウナギ、トキ、タンチョウヅルが同じ絶滅が危惧されるEN(Endangered)にリストされている。言い換えれば、ウナギの蒲焼を食べることは、トキやタンチョウヅルの焼き鳥を食べることと同じということだ。ウナギを食べないことは、それほど難しいことではない。簡単にできる。違法取引由来のウナギを、どうしても食べなければならない理由はない。一人ひとりが食べないことで、すぐにも状況が改善されることはないかもしれない。しかし、今以上に悪化させないことには寄与できるだろう。食べ尽くしてしまっては後がない。
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