米国に拠点をおくネスレなどの多国籍食品企業4社は7月12日、Sustainable Food Policy Alliance(SFPA:持続可能な食品政策連携)を設立したとする共同声明を発表した。この新組織の設立には、ダノン(フランス)、ネスレ(スイス)、ユニリーバ(オランダ)の米国現地法人と米国のチョコレートメーカーのマースが参加した。4社は連携して、消費者の健康や食品、地域社会、地球に影響を与える公共政策の進展を促進に重点を置くとしている。
この背景には、GM表示を求めるキャンペーンに象徴されるような消費者運動の大きな流れがある。米国は2016年、GM表示法を制定したが抜け道だらけのザル法とも評されていた。先ごろ米国農務省が示した制度案では、QRコードの導入や小規模業者の免除など、問題が大きいと指摘されている。
持続可能な食品政策連携(SFPA)は、主要な課題として次の5項目を掲げている。
- 消費者の透明性
消費者が購入する食品について消費者が利用できる情報の質とアクセス可能性の向上 - 環境
気候変動の影響に対処する革新的で科学的な解決策の提唱、より弾力のあるコミュニティの構築、再生可能エネルギーの促進、持続可能な農業システムのさらなる発展 - 食品の安全性
食品と世界的なサプライチェーンの品質と安全の確保 - 栄養
人々が持続可能な環境実践をサポートしながら、健康的な食べ物に貢献するより情報に富んだ食物選択肢を作るのを助ける政策を開発し、支援する。 - 人と地域社会
多様で健全な職場を促進し、農村部の経済を含むサプライチェーンを支援する政策を推進する。
ロイターによれば、米国におけるGM表示ついて、ネスレの広報担当は「消費者は食品や飲料に含まれるものを知りたいと考えており、透明性が必要だと考えている」と述べたという。新組織の設立には参加しなかったハーシーの規制責任者は、GM表示について「透明性に関する消費者の期待に応えることだ」としているという。どちらも食品表示の透明性を重視している。
・Reuters, 2018-7-4この新組織の設立には、米国の遺伝子組換え食品表示に関する立場の違いが大きく影響していると見られている。新組織は5つの主要な政策課題の一つとして「透明性」を掲げ、消費者の知る権利の尊重をあげている。一方、ロビー団体の全米食品製造者協会(GMA)はGM表示そのものに反対してきた。GM表示を求める消費者運動の高まりの中、新組織のネスレやユニリーバなどはGMAを脱退していた。ほかには食品大手のキャンベルやハーシーなども脱退している。
多国籍企業のネスレやダノンは、米国の消費者運動の高まりをとらえて新組織を設立した。しかしこのことが、ネスレのような多国籍企業が、世界中で米国と同じように動くかといえば、懐疑的にならざるを得ない。共同声明は米国限定を明確にしている。言い換えれば、新組織のような動きは、消費者の意識や声の大きさと表裏の関係にあるということではないか。
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