環境省はゲノム編集作物の扱いについて「カルタヘナ法におけるゲノム編集技術等検討会」による検討を始めたが、外来遺伝子を組み込まず、目的とする遺伝子の機能を働かないようにするノックアウトで作出したゲノム編集作物に対する規制を外そうとしている。この環境省の方針に対して日本消費者連盟など3団体は8月10日、ゲノム編集作物を遺伝子組み換え作物と統合して規制するよう求める意見書を環境大臣や農水大臣、厚労大臣、消費者庁長官などへ提出した。3団体は、同様の意見書を「カルタヘナ法におけるゲノム編集技術等検討会」の座長と委員にも提出した。
「ゲノム編集技術など遺伝子操作技術の規制を求める意見書」は、ゲノム編集が必ずしも安全ではなく、目的外の遺伝子を改変するオフターゲットの存在を指摘し、「一連の操作の過程で、操作対象の生物の遺伝子を傷つける可能性が否定できません。結果として想定外の有害因子を生ずる可能性は否定できず、安全とはとても言えません」としている。
そして、ゲノム編集が自然界で起きる現象とは異なるものであり、遺伝子を操作された新しい生物が規制対象外となり、野生生物や作物と交雑して遺伝子汚染をもたらす可能性があり、その結果想定外の生態系への影響が起きた場合、対応は困難だと指摘している。
意見書はまた、「新技術は安全ともいえず自然とも言えないもので、消費者は不安を持っています。消費者には選択する権利があります。遺伝子組み換え食品の表示制度も改め、すべての遺伝子操作食品についての全面表示を要望します」と、消費者の知る権利を尊重し全面的な表示をするよう求めた。
意見書は、日本消費者連盟のほか、遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンと食の安全・監視市民委員会の3団体連名で提出された。
・日消連, 2018-8-10意見書も指摘しているように、目的外の遺伝子を改変するオフターゲットはゼロではない。環境省の示したノックアウトを規制の枠組みから除外する方針は、オフターゲットで作出したゲノム編集作物の食品としての安全性や環境への影響を無視することになる。そして、規制の枠外のゲノム編集作物が商業化され市場に出てきたとしても、消費者は知るすべがなく選択できない。本来であれば、抜本的な表示枠組みを見直すべきだ。しかし、問題の多い現状の遺伝子組み換え食品表示制度であったとしても、少なくとも表示が必要だ。
欧州司法裁判所は7月、ゲノム編集技術を使って遺伝子操作した新品種はEUのGMO規則の適用を受けるとする司法判断を下した。これにより欧州では、ゲノム編集を使ったノックアウト品種も従来の遺伝子組み換え作物と同様に、環境アセスメントとトレーサビリティ、表示が必要となる。他方、米国農務省の方針は、ノックアウトによるゲノム編集作物を規制しないとしている。環境省が示した方針は、米国の方針と同じものである。米国のカリクスト社は、ゲノム編集技術を使いノックアウトで開発した高オレイン酸大豆の商業栽培を始めているという。
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