

ロンドン大学の研究グループは8月15日、新しいネオニコチノイド系のスルホキサフロルがマルハナバチの繁殖に有害とする研究結果をネーチャー誌に発表した。この結果に研究グループは、マルハナバチや他の野生ミツバチに対する新しい殺虫剤の亜致死的影響をリスク評価プロセスに組み込む必要性があると指摘している。マルハナバチなど野生のハチは、作物の受粉の多くをになっている。農薬を使うことで、受粉の担い手を失っては農業そのものが成り立たなくなる。しかし、ネオニコチノイド系農薬の規制が進みつつある中、スルホキサフロルは、ネオニコチノイド系農薬に代わると「期待され」ているという。
研究グループはまず、採集した300匹余りの野生のマルハナバチの女王バチから50匹を選別した。これを2つのグループに分け、一方のグループにスルホキサフロルを含む砂糖水を与え、対照群には砂糖水だけを与えた。その後、それらのコロニーを野外に移して観察した。スルホキサフロルを与えたて2〜3週間でこれらのコロニーと、対照群のコロニーで個体数の差が生じ始めたという。スルホキサフロルに曝露されたコロニーでは、繁殖能力のあるハチが54%減少したという。
研究グループは、「この結果は、スルホキサフロルがマルハナバチのコロニーの生殖能力に悪影響を及ぼす可能性があることを示している」、「ハチを直接的に殺さないストレス要因は、コロニーの健全性がその労働力の健全性に依存するため、悪影響を及ぼす可能性がある」としている。そして、スルホキサフロルの野生生物への影響についてはデータが少なく、野生のハチ類が実際にどの程度のレベルで曝露しているかについてもっと知る必要があると指摘している。
・Nature, 2018-8-15 ・Royal Holloway University of London, 2018-8-14 ・Nature, 2018-8-15 ・Euractiv, 2018-8-15スルホキサフロルはダウの開発した新しいネオニコ系農薬で、ニコチン性アセチルコリン受容体に作用し殺虫効果を示す殺虫剤。EUは2015年、米国は2016年に再登録、日本は昨年農薬登録されている。この9月1日からネオニコチノイド系を全面禁止するフランスでも禁止対象から除外されている。
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