

秋田県上小阿仁村議会は9月13日、生きもの共生農業を進める会など3団体が提出していた、農産物検査法の着色粒規定の廃止などを求める「農産物検査法の抜本的見直しを求める陳情」を採択した。この陳情は小坂町議会、八峰町議会でも採択された。同会は、同様の請願や陳情をを秋田県内25市町村議会に対して提出していた。コメ農家の声が反映された国への意見書は、大潟村、五城目町に続くもので、秋田県内の5議会が採択した。同会では、「各地の9月議会が終わり次第、今後も採択が増える」とみている。
同会などは陳情で、政府が米の等級廃止など農産物検査法の抜本的見直し、食の安全・安心を図ることを目的として、現行の検査制度による弊害解消のために4項目を早急に実施するよう国に要請するよう求めていた。
- 現行農産物検査法を抜本的に見直し、食の安全・安心を図る目的とすること
- 農産物検査法「着色粒」規定の廃止
- 等級制の廃止
- 関連法である食品表示法の見直し
同会などは、農産物検査法の着色粒規定により等級格付けを行ったとしても精米することで意味がなくなることで、生産者の売り渡し価格が小売価格に反映されず、生産者のみならず消費者にも不利益を生じているとして、精米業者が利益を得る不合理な制度になるとしている。
さらに、等級間で売り渡し価格に差がつくことで、水田での斑点米カメムシ類を対象とした農薬散布を促し、環境汚染や水田生態系を破壊していると指摘している。
過剰に斑点米カメムシ防除のための農薬散布が行われていることは、公表されているデータからも明らかになっている。毎年出版される農薬要覧(日本植物防疫協会刊)には、実際のカメムシ類の発生面積とともに防除面積、延べ防除面積のデータがまとめられている。このデータからは、全国で発生面積のほぼ2倍の圃場で農薬が散布され、その延べ面積は発生面積のほぼ3倍に及ぶことが明らかになっている。
着色粒規定は来年まで待たずに廃止を
齋藤農水大臣は7月6日の会見で農産物検査法の見直しについて言及し、検討中であり、農業競争力強化支援法の附則が最初の検討を施行日から2年以内に行うと規定しているところから、来年8月までに「必要な措置を講ずる」と答えている。
附則で2年という数字が書かれていますので、したがって農産物規格・検査についても、法律が施行された平成29年8月からおおむね2年以内に検討を行い、必要な措置を講ずるということになるということであります。
米の産地でも着色粒規定の緩和を求める声が上がっている。農水省は2015年、関係者への聞き取りとともに都道府県にアンケート調査を行っているが、この結果を公表していない。生きもの共生農業を進める会と反農薬東京グループが独自に調査したところ、回答のあった22府県のうち青森、岩手、秋田など12県がは着色粒の混入限度緩和に賛成していたという。
・生き物共生農業を進める会, 2017-6 ・河北新報, 2017-9-8農産物検査法の着色粒規定では、着色粒により3等級に格付けされる。1千粒当たり1粒まで(0.1%)なら1等米、3粒まで(0.3%)で2等米、7粒まで(0.7%)で3等米。この格付けで買入価格が大きく変わる。この着色粒規定の根拠について、かねてより反農薬東京グループなどの市民団体がその根拠を示すように求めても、農水省は「該当する文書は見当たらない」と回答していた。グリーンピース・ジャパンが先ごろ、情報公開請求を使い、農水省に正式にその根拠となる数式やデータの開示を求めたところ、「当該最高限度を算出した数式やデータは存在しない」と回答し、着色粒規定に根拠がないことを認めた。
日本は年間70万トンの米を輸入しているが、その輸入米の検査では国内産米にある等級格付けは行っていない。そればかりか、着色粒規格は最高限度1%と国内産1等米の10倍となっている。明らかな二重基準がまかり通っている。
農水省はこれまで、着色粒規定の必要性の根拠として、消費者のクレームになるという米の卸業者や小売業者の主張を繰り返し述べている。しかし、グリーンピース・ジャパンは先ごろ、生協などへのアンケートで、斑点米は主なクレームではないという調査結果を発表している。
・グリーンピース・ジャパン, 2018-6-19このように環境を汚染し、根拠も不明、産地でも不要論、輸入米との二重基準、過大な消費者クレームに立脚した着色粒規定は、中間業者の懐が膨らむだけであり、生産者にも消費者にも要らないものだ。農水省は来年8月を待たず、すぐにも廃止に踏み切るべきだ。
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