最終更新日:2018年10月6日
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2018.10.06 No.969
■ゲノム編集由来の大豆油が米国市場に 加工は有機認証大豆製油所
High_Oleic_Soybeans.jpg / Flickr
米国の高オレイン酸大豆畑 / United Soybean Board / Flickr

 米国のゲノム編集作物開発企業カリクスト社は9月28日、同社のゲノム編集高オレイン酸大豆の搾油加工について、有機大豆油などの委託加工業者の一つアメリカン・ナチュラル・プロセッサーと契約したと発表した。同社はまた、KemX Globalとも契約したと10月4日に発表した。同社は今年後半から来年前半にかけて、同社のゲノム編集高オレイン酸大豆を使った大豆油の販売を始めるとしている。この発表通りとすれば、ゲノム編集加工食品がスーパーの棚に並ぶ可能性がでてきた。同社のゲノム編集大豆は、特定の遺伝子を働かないようにしたもの(ノックアウト)で、外来遺伝子の挿入を行っていないことから、米国農務省は遺伝子組み換えではないとしているという。

 カリクスト社の契約したアメリカン・ナチュラル・プロセッサーは、同社のサイトによれば、認証オーガニック大豆レシチンの契約製造業者であり、小売用の有機認証大豆レシチンを製造する世界で唯一の工場だという。こうした有機認証の加工工場でゲノム編集大豆の加工が行われるということは、先のEU司法裁判所の決定にあるように、ノックアウトも含めてゲノム編集も遺伝子組み換えとする流れの中、工程が完全に分離されなければ、有機加工食品のサプライチェーンがその源流で「汚染」される可能性がある。

 カリクスト社は2015年7月、米国とアルゼンチンでこのゲノム編集大豆の試験栽培を始めた。同社は今年4月、同社の高オレイン酸大豆の商業生産を開始すると発表。75人の大豆農家と栽培契約を結び、1万6千エーカー(約6千5百ヘクタール)で栽培するとしていた。同社は、米国農務省の規制要否の判断を求め、農務省の規制不要の判断のあるものだけを商業栽培に進めているとしていて、このゲノム編集大豆の規制は不要と判断を得ているともしている。

 ・Calyxt, 2018-9-28  ・Calyxt, 2018-10-4  ・Calyxt, 2015-7-8

 カリクスト社は、商業栽培を始めた同社のゲノム編集大豆が有機栽培か否かについては触れていない。確定的ではないが、委託した先が有機大豆加工専門であることから有機栽培の可能性もあるかもしれないし、米国の有機需要の高まりを見てのことかもしれない。

 スタートリビューン紙(電子版)によると、カリクスト社は2015年中ごろに米国農務省より遺伝子組み換え作物ではなく規制されないとの確認を受けたとしている。米国農務省動植物検疫局の問合せに関するページには該当する確認レターは掲載されていない。

 ・Star Tribune, 2018-9-28  ・USDA APHIS

有機栽培のゲノム編集作物は「有機」か

 米国の全米有機認証基準委員会(National Organic Standards Board)は2016年11月の定例会議において、ゲノム編集技術などの新育種技術による遺伝子操作由来の成分について、従来の遺伝子組み換えと同じように、有機食品としては認めないとする勧告を満場一致で決議している。今回のカリクスト社のケースは、有機栽培された(ノックアウトの)ゲノム編集作物も有機農産物として容認するのかということでもある。

 日本では、環境省に続いて厚労省がゲノム編集作物由来の食品について、ノックアウトを除外する方向で表示の検討を始めている。その中でこの問題も、当然クローズアップされなければならない。ゲノム編集作物は、特定の遺伝子を働かせないノックアウトといえども遺伝子を操作している以上、有機栽培したとしてもゲノム編集作物は「有機」ではない。遺伝子組み換えの制度の枠組みからノックアウトのゲノム編集作物を除外し、その上で有機農産物として容認するのであれば、遺伝子組み換え技術を排除している有機認証制度の信頼性を揺るがすことになる。

 貿易統計(財務省)によれば、2017年の日本の輸入大豆油は4860トンであり、そのうち米国産は2200トンと約45%を占めてる。加工していない大豆としての輸入は2017年に320万トンで、そのうち235万トン(73%)が米国産となっている。

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